第18話 山もりの謎
僕と幹彦は、免許層の裏に現れた文言を、信じない訳には行かなくなってきた。
しかし、全く腑に落ちない。
「僕がいつどこでダンジョンを踏破したんだよ?実習でしか入った事もないのに」
僕はソファの背もたれにもたれて天井を見上げた。
「まだまだあるぞ」
幹彦は2枚の免許証を並べて、睨みつけた。
「神獣って何だ。それに史緒、魔術師なのか」
僕は力なく笑った。
「何の魔法だよ。使えるんなら使ってみたいもんだね」
「何だろう。人を笑顔にする魔法とかいうやつだったりしてな」
幹彦が冗談を言うので、応える。
「遺族は泣くか喚くか脅すか買収しようとするかだったし、遺体は笑わん。生きた人間を相手にする医者とは違うからな」
「あ。分解とか観察って、そういう事か。遺体を切ったりよく見て調べるから」
僕はその意見を考えてみた。
「なるほど。じゃあ、構築ってのは、解剖の後で閉じる行為からか?」
「称号って、いい加減なのかな」
それで2人で笑ったが、同時に現実に立ち返って嘆息した。
あとはなんだったっけ。そうだ。神獣と精霊樹だ。
「神獣って何だよ。これまで飼った事があるのは、インコと金魚とチビだけだぞ」
幹彦がふと気付いたような顔をした。
「俺にも神獣の主があるって事は、俺達が共通して面倒を見た動物って事になるぞ」
「小学校の時、一緒に動物係をやったな。それから、高校の時は中庭の池にいた鯉によく一緒にエサをやったし」
「ああ。小学校の時に飼っていたのはザリガニとフナだったけど、どうって事の無いやつだったな。鯉も別に普通のやつで、近所の野良猫に襲撃されて死んだんだったな」
「ああ。あれが神獣だったとはどうにも考えられない」
「あとはチビだぜ」
チビは、狩りに出ているのか姿が見えない。
「あんなに小さいのに?」
それに幹彦は異を唱える。
「小さいくせにウサギやシカやトリにも立ち向かって簡単に仕留めるのは、異常だぞ。
それにだ。チビが獲って来るジビエは、魔物だ」
まあ、それは、ダンジョン実習に行って気付いた。ダンジョンの魔物だというウサギは、角がある所も大きさも魔石の位置と大きさも、全てが一致していたのだから。
勿論何も言ってない。
「まあな。
でも、猟師さんが連れて来てた猟犬だって──あ」
そうだ。小さいチビに怯えていたんだと今ならわかる。
「どうしよう。神獣だとばれたら連れて行かれるのかな」
もう、チビは家族だ。
「黙っていよう。チビは、犬だ。見かけより強いかわいい子犬なんだよ」
説得するまでもない。幹彦は元々犬派だ。チビを差し出すわけもない。今も可愛がって、よく一緒に遊んでいるのだから。
「おう!」
僕と幹彦は、チビの神獣疑惑にふたをした。
「精霊樹ねえ」
「これもさっぱりだよ。家庭菜園しか土いじりはした事が無いし」
再び2人で考え込む。
「そうだ。地下室の、やたらと大きくなるのが早い立派な木。あれって何の木だろうな?」
「さあ。元々はただの枝だったんだけど……まさか……」
「その疑いは濃厚だぜ」
地下室の扉の方を見た。
「なあ。やっぱりこの地下室、本当に地下室なのか?」
僕だって、それは知りたい。
「地下室を見付けた日の事から俺が来るまでの事を、もう1回よく考えてみようぜ」
言われて、僕は思い出しながらあの日の事を話し出した。
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