妹ちゃん☆ねるダイヤル

塩鮭亀肉

第一の世界

プロローグ

 夏休みが終わって授業が再開して早一ヶ月ちょっと。特に部活に所属している訳ではないので、休みは休みらしく存分に休んだのもあるのか、夏休み明けの気分が抜けきるのに時間がかかって、いつもより心なしか体力の消費が多い日々を過ごしていた。


 九月中は夏を引きずっていたのか妙に蒸し暑かったのだが、十五夜もとうに終わったという今でも相変わらずの様子だ。季節が夏を名残惜しまないでほしいなと思うのだけども、どうにも気温はあんまり下がらない。


 夏休み前とあまり変わらない日々を過ごしているはずなのに、気温のせいなのか、あるいはなにかものたりないという気がするせいか、なんとなく気だるさを感じてしまっている。


 やる気が湧かないので授業は聞き流しつつも、ノートの上でシャーペンを持つ手を動かしてはいる。こうすれば、やる気が出たときに見返せるし、教師に怒られることもない。


 休み時間は友達と内容もない会話をして過ごし、授業になったらまた適当にノートを取る。そうして放課後になったら、明日からの二連休に思いはせて帰り支度を済ます。


 暦上での季節に疑問を浮かべながら、家に向かってとぼとぼと歩く。


 結構冷えていた電車内を経由したからなのか、最寄り駅からは家までの道はとても暑く感じた。


 「米軽」の表札を視界の端に入れながら、「ただいまー」と誰もいない家の中に声をかける。


 ようやく帰った自宅はもっと暑くて、なんだかとってもやる気が削がれた。

 リビングに入るものの、当然エアコンが付いているはずもなく、暑いと文句が漏れてしまう。


 冷蔵庫にあった牛乳をコップに注ぐ。とりあえず一杯はその場で飲みほして、残りはコップと一緒に自分の部屋まで持っていくことにした。


 部屋に戻ると、荷物などを置いてエアコンを起動してから、トイレにいって、洗うついでに水道水で手を冷やしてから階段を上がった。


 どうせまだ暑いんだろうなと思いながら、自室のドアノブに手をかけた時、ふと隣の部屋のドアが目に入った。


 なんとなく、本当になんとなくだが、隣の空き部屋が気になった。


 どうせ部屋が冷えるまでしばらく時間がいるだろう、そう思って僕は自室のドアノブから手を離して、となりの部屋のドアを開いた。


 それが日常が変わるきっかけとなるなんて、想像のしようもないことだった。でも、その行動が僕の日常を変えることとなった。


 空き部屋が冷えているはずはなく、とても蒸し暑かった。


 そういえばこの部屋にはなにがあるのか良く知らない。

 この部屋は特に家具もないし、かといって物置になっている訳でもない。


 パッと見では何かあるようには思えないけど、せっかくなのでちょっと調べようかなと思いドアを閉じた。


 その瞬間、まるで物語の中の一ページのように不思議な出来事に見舞われたのだ。

 部屋に光が満ちていく。眩しさに思わず目をつむる。


 まぶた越しにだが少しずつだが光が弱くなっていくのを感じ、そっと瞳を開くと、光の中から一人の少女が現れた。


 彼女は真っ白な髪の毛を腰までのばし、おおよそ無防備といって差し支えのないワンピースを身につけていた。


 そして、彼女は……



「ふははははー、私は妹神。全妹を総べる神なのだー」



 ……なんだかとっても電波な感じがしていた。


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