君がいる場所

眞柴りつ夏

第1話

 木の香りが鼻をくすぐった。

 嗅ぎ慣れないけれど、何故か懐かしさを感じる。しばらくそれを堪能して、はて、と思う。


 ——俺いま何してる?


 片頬が木の床に擦れて痛い。どうやらうつ伏せに寝ているらしい。

 手を動かそうとして、何かに阻まれた。無理に動かそうとすると、肩にひどい痛みが走る。


(……嘘だろ)


 足も一括りにされているようでびくともしない。

 拘束されて、床に転がされているようだった。


(何これどういう状況?)


 恐る恐る目を開いてみる。が、外からの明かりが微かに入ってきているだけで、部屋の様子は全くと言っていいほど見えなかった。

 声を出してみようと口を動かそうとしてみるが、それも儘ならないことに気がつく。舌が何かにぶつかる。布?猿轡までされている。


(……俺、何したの。てか何に巻き込まれてんの?)


 焦った方がいい状況だと思うのだが、何故だか冷静。

 とりあえず深呼吸するか、と鼻から吸う。そしてゆっくりと吐こうとした瞬間、


「起きたか?」


 顔が向いている方向と反対側、耳のすぐそばで声がして、心臓が跳ねた。

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