放課後の夕陽
トラース
二つの影法師
今日も変わらない学校生活。
親友と話しながら登校する。
向日葵見たいな笑顔を向ける彼女にドキドキしながらいつもと変わらない対応をする。
そう私、
出会いは植物達が実を持ち始める中学2年の秋、窮屈な学校生活にうんざりしていた頃だった。
「××県から来ました。
山口春奈です。趣味は食べる事です。
よろしくお願いします!」
一目惚れだった、世界が輝いて見えた。
恋というのはこんなにも胸が火のように熱くなる物と初めて知った。
可愛いこげ茶の長髪、少し落ち着きがない所、可愛い声も全てが好きだ。
既にグループが出来てる頃だから彼女と友達になるのは容易だった。
彼女と一緒に帰る為に遠回りした。
高校も同じ所にした。
それだけ一途だが告白する勇気は持ち合わせなかった。
“関係が崩れたら”
それを思う度、耐え切れない苦痛と吐気がした。
それに親友なら自然に手も繋げる、写真も撮れる、別にこのままでもいいじゃないかと半ば無理やり自分を納得させていた。
昼食の時間になった時同じ所で昼を食べた。
前の授業は総合学習でLGBTQの授業があった。
菓子パンを食べながら春奈と話す。
「春奈、ちょっと相談があるんだけど…」
「ん?なになに?恋バナ?」
「まぁ、そうだよ」
あからさまに楽しそうに目を輝かせる春奈。
おかげで箸を持つ手が止まっていた。
「え?!…だ、誰誰?相手は?」
「…近所の女子大学生に告白された……」
勿論、告白も女子大学生も嘘だ。
関係を壊したくないのもあるが、彼女は同性と付き合えるのか恐怖より好奇心が勝った。
次の答えで“もしも“の可能性が消える。
今までに無い心臓が高鳴る。
「んーー…、彩ちゃんはその人のことどう思ってるの?」
「…分からない、
その人とは長い間居たから…。
同じ状況なら春奈はどうする?」
「あたしなら…OKしちゃうかなー」
「…同性でも?」
周りに聞こえてしまうんじゃないかと思うほど胸が熱い。
「気づかなかっただけで実は両方付き合えるとかあるだろうし……」
腕を組んで真面目に考えてくれる彼女を眺めながら、素っ気ない感じを装って
「…そっかー。
ありがとう参考になった」
と答えた。
内心顔に出てしまうんじゃないかと思う程嬉しかった。
この時に私の心は決まっていた。
絶対に告白しよう。
正直、無理に納得させる生活は限界だった。
彼女が誰かと付き合い始める前に告白しようと胸に決めた。
綺麗な夕陽が見える帰り道、春奈を遊びに誘う。
「…そういえば話変わるけど来週暇なら遊ばない?見たい映画あるんだよね」
「いいねっ!
バリバリ暇」
グッと親指を立てて笑う彼女につられて私も笑った。
私と彼女の二つの影法師が伸びていた。
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