第24話 募集

今日はいよいよ募集者の情報が来る日だ。ギルドに依頼して早くから届いたものでもまとめて送るように頼んでいる。


『効率という面で言えば都度送って貰う方が良かったでしょう』


(まぁそれはそうなんだけどできるだけ公平に応募者を見たいからね、それに向こうの手間も考えてあげないと)


「さて、そろそろ届くころかな」


扉がノックされて宿の女将が大きな封筒をこちらへ渡してきた。


「こんなのがたくさん来ているから取りに来て」


そう言うということは一人では運べない量なのか、そんなにいたのか?


流石に冷やかしのような応募は蹴って貰っているからそんなにないと思っていたんだけどな。


『この街で良い話はほとんどないでしょうから広まるのも早かったのでしょう。そんな貴方達に同行したいと願い出る人がいるのは不思議なことではありません』


(前世ではこんな切羽詰まった状況って言うのは体験してこなかったからな。それユカもそういうのには疎そうだし常識を持っている人がいいのかなぁ)


『そうですね、それをお勧めします。しかし、実力があってそういった感性を持っているというのはかなり希少な存在ですが・・・』


そうだよなぁ、俺は前世の記憶があるからまぁ除外としても両親もよくよく考えれば世間一般と少し違う感じがするしユカは言わずもがな。大体実力あるやつってのはなんかおかしかったりするもんな。


「そんなことで悩んでても仕方ないな、早速見てみよう」


部屋に積まれた20ほどの封筒を一つ一つ確認する。なんだか書類上はどれも強そうだ。因みに写真とかいう便利なものはないので文字の情報しかない。年齢と性別くらいはわかるんだけどな。


「とりあえずここに書いていることが嘘でないとして見ていくか」


そして3時間ほどかけてなんとか5つに絞った。あとはこの結果をギルドに送って3日後に面接と実戦試験をして決める。


一仕事終えて横になったタイミングでユカが帰ってきた。


「ただいま~、どう?決まったの?」


「一応5人に絞ったよ。後は3日後に実際に会って決めるから流石にその時はお前も来いよ」


「流石に行くわ。これから一緒に行動するかもしれない人は私にも選ぶ権利はあるわ」


「今日ゆっくり遊んでた奴が何か言ってるよ」


流石にこれには言い返せなかったようで黙りこくる。まぁ2人でやってたらもっと時間かかった可能性もあるしこれ以上言うのはやめておこう。


「ちょっと言い過ぎた。これが俺が選んだ5人だ、当日までに目くらいは通しておいてよ」


ユカは何も言わずに俺の差し出した紙を受け取り、自分の部屋に戻っていった。


再び静かになった部屋で横になる。なんだかんだ忙しかった1週間だった。ゆっくりするのは多分初めてだろう。


ベッドの上でゴロゴロしていたつもりだったが気づけば朝陽が差し込んでいた。いつの間に寝てしまったのだろう。まぁいいか、今日はゆっくりできる日だ。


「偶にはゆっくりしないとな。ふかふかなベットで寝れるとはいえ休息は大事だ」


久しぶりの休日ともいえる日に甘えて二度寝をする。何も考えなくていい日最高!


何もしないという甘美な日はあっという間に過ぎていく。あぁ、こんな日がいつまでも続けばいいのに。


そんなこんなで面接の日はすぐに訪れる。


「なんというか、俺が採用する側なのになぜか緊張するな」


「あんたがしっかりしてくれないと変なの採用しちゃうかもしれないじゃない。ちゃんとしてよ」


「いや、お前もそれくらいは見極めれる目は持っているだろ」


「あまり期待しないで欲しいわ。貴方も知ってのとおり私は普通の人とは少し違う境遇で生きてきたからね」


「それを言ったら俺だってギルドなんて今回が初めてだ」


「あら?でも何か知ってそうな感じじゃなかった?いったことはなくてもどんなものか知っている。そんな感じに見えたわ」


(こいつ心が読めなくても何か察しているような感じはあるな)


「さぁね、そう見えたならそうかもね。さて、そろそろ行くか」


ギルドに結構なお金を払ったこともあって個室を手配してくれることになっている。やっぱりお金ってのは大事だよな。


ギルドの受付に個室へと案内される。すぐに1人目が来るようだ。そんなにすぐ来るってことはもしかして待たせたのかな?


「そんな心配しなくてもいいじゃん。こっちは時間通りに来てるんだからさ」


「勝手に読まないでくれ」


「おっと、来たね。ここからは真剣に行きましょう」


部屋の扉がノックされる。いよいよだ。


(はぁ、緊張するなぁ。前世で面接されることはあってもすることはなかったもんな。一応どういうことを聞くかは決めているけどアドリブはそんなに得意じゃないしどうしよう)

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