第22話 責任と対価
「・・・ということがあって私は魔物の討伐によって魔素の濃度が一時的かどうかはわかりませんが下がると判断しました」
魔物討伐の報告後、受付の人に偉い人に話したいことがあると言うとすんなり通してもらえた。どうやら想像以上の魔物を狩ってくれたことに感謝の意味を込めて向こうから会いたいとのことらしい。
そんなわけで今、ギルド長相手に今回の魔物討伐についての俺の見解を説明している。
「なるほど、そんなことがあったのか。すぐに担当の者を現地に向かわせてみよう・・・しかし、魔素か。文献でしか聞いたことの無い単語だったので少々困惑しているというのが正直なところだ。だがこの異常を説明しようとするとそれしかないというのも納得はできる。こちらでも調べれることはやってみよう」
実際に見せるまでもなく、俺の言うことを信じてくれたのはとてもうれしかった。まぁ今部下に確認させているのだろうけど。
(それにしてもこうなるってわかるんだったらもっと早く魔物退治してればよかったかもなぁ)
『やってみないとわからないということです。しかし、時間は有限なのでどう取捨選択するかが大事なのです。私でもすぐに魔物退治をすることはしなかったでしょう』
うーん、まぁ結果オーライってことでいいかな?
「そういえば俺達が魔物を倒したから今なら北側への移動も多少はしやすいんじゃないか?」
「あぁ、その件だが今確認中だ。必要な物資を急いで運んでもらわないとな。特に医療関係の物資が切れかかっていたから本当に助かったよ。これは私からの追加報酬だ」
ギルド長はドンっと何やら重いものの入った袋を机の上に置いた。中身は見えないが大金とわかる量のお金というのははっきりとわかる。
「冒険者ってこんなに簡単に稼げるのね。悪くないわね」
(おいおい、初めての依頼でこんなに貰ったから勘違いしてるよ・・・あとで教えてあげないとな)
「ありがとうございます。でもいいのですか?まだ確認は終わっていないでしょうに」
「実は君達の戦いを見ていた冒険者から君達の戦いっぷりと魔物がかなり減ったこと報告があったんだ。流石に魔素のことまでは分からなかったようだけどね」
俺達の来る前にある程度話は決まっていたのかなぁ。切羽詰まっているだけあってみんな真剣なのだろう。
「ではありがたく頂きます」
お金を受け取った後、ギルド長はわずかに笑みを見せる。何か嫌な予感がして先に断ろうとしたが僅かに怯んだ隙をつかれ先を越されてしまう。
「実はもう一つ頼まれごとがあるんだが・・・いいかな?」
「話だけは聞きます」
「街の北側の魔物を粗方倒してくれたそうだが、街の防衛という意味ではまだ安心できる状況じゃない。そこで街の周囲の魔物も倒してもらいたのだが・・・」
やっぱりそうだ。それ込みでさっきのお金を渡してきたのだろう。自分からするのは遠慮だが頼まれたとあってはまた話が変わる。
「うーん、報酬まで考えると悪くはなさそうだけど、どう思う?」
どうって・・・結局俺が決めなきゃいけなさそうだなぁ。さてどうするか。
『この街に留まる理由ができるというのは悪くはなさそうですが・・・』
そういう考えもできるのか、うーん・・・まぁ聞いてしまった以上は仕方ないか、思ってたよりも苦戦しなかったし美味しい依頼と思おう。
「わかりました。できる限りのことをしましょう」
「ありがとう。君なら受けてくれると思っていたよ」
よく言うよ。まぁそういう図々しさも大事なのかもな。
その後、新しい依頼の内容を一通り聞いた。特に変わったことはなく、期限もないので自分たちのペースでできる。依頼が終わるまで街の周囲より外に出てはいけないこと以外は文句がつけようがなかった。
すぐに依頼内容を承諾し、早速魔物の狩りを開始した。今回は範囲が曖昧で広かったので完了までに1週間ほどかかったが特に苦労することもなく最後の1匹を倒した。
「やっぱり魔素の濃度が下がっている・・・よな?」
『そうですね。最初の頃と比べると全然違いますね。それでも平時よりは高いですがこれなら貴方達がいなくてもしばらくは問題ないでしょう』
(しばらくって・・・また元のようになる可能性が高いってことか?)
『はい、徐々に魔素の濃度が上がっていっています。もちろんとてもゆっくりとですからすぐに戻ることはありません』
(長期的に見たら何も解決になっていないってことか、やっぱり根本原因を何とかしないとだめなのかなぁ)
「俺達が頑張れば世界が救われる可能性が高いってことか」
ぽつんと呟いたが風にかき消され、誰も聞くことはなかった。
『なんだかんだ世界を救うことからは逃れられなさそうですね』
(はぁ、自分のお人よしにうんざりしているところだよ。もっと無責任な神経持っていればよかったなぁ)
『そういう人だから選ばれたのでは?』
確かにそうだな。全く、人が悪い。
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