第19話 情報収集
一人で街をうろつくのは久しぶりだな、そんなに昔の話じゃないのに。
・・・厳密には一人じゃないのかもしれないけど。
『呼びましたか?』
呼んでない。一生引っ込んでいてくれ。
さて、本題へと戻ろう。日が昇って大分経つが街を行き交う人のほとんどいない。そこそこ大きな街ではあったはずなのだやっぱり長期に渡って街が半封鎖されている影響だろう。
昨日話したような元気の残っていそうな人はいないかと探していたが中々見つからない。それもそうだ、そういう人はそもそもあまり残って無くてさらに街をうろついているなんてとても期待できることではないからだ。
「はぁ、とりあえず人の多そうなところに行くかなぁ。昨日行っていなかった場所もあるからその辺りを中心にかな」
ため息をつきながら冒険者の集まる場所、冒険者ギルドへと向かった。
中へと入ってみたが活気のあるイメージとは程遠く、疎らだ。
(それもそうか、こんな状況でまともな依頼なんて出るわけないもんな)
一応、依頼を確認してはみたがやはり魔物の討伐依頼が幾つも放置されている。放置されて結構な日数が経っているのか報酬額が何度も上乗せされている。
「大体予想通りだな。ここで色々聞いてみるか」
『腕に自信のありそうな方もいますね。情報が期待できそうです』
俺達の予想通り、ここで魔物の退治の依頼を共同で受けてくれる人がいないか探している人がいた。彼らは地震後も魔物を相手にしていたがメンバーの一人が負傷したため活動休止を余儀なくされていたらしい。
「想像以上にこの街の周りにいる魔物は強いよ。君も注意したほうがいいよ」
「知っているさ。わざわざこの街に来たのだからな。それにしても君達のように魔物退治をしている人がいるということに驚いているよ」
「それは大分前の話さ。万全の状態でどうにかって程度の実力しかなかったんだ。一人やられてしまった俺達はもう何もできないただの冒険者さ」
「そんなことないよ。君達のおかげでこの街はまだ耐えれている。そうだろ?」
「・・・さぁな、俺たち以外にも頑張ってた人は結構いたんだぜ?もう半数は戦うのを諦めたらしいがな。残りの人達も諦めればこの街はもう終わりだ」
「思ったよりも事態は深刻なようだな。手伝うこともできそうだが所詮時間稼ぎにしかならなそうだな。うーむ」
「よそ者がこの街のために頑張る必要なんてないよ。この街は遅かれ早かれ放棄しなければいけない。今はただ移動したくてもできない人が大勢いるからこうなっているだけさ」
俺は何も言い返すことができなかった。この男の言う通りだったからだ。だがここで引き返してしまっては駄目だ。
「魔物と戦ってたってことはどんな魔物が出るかとかの情報も当然持ってるよな?」
コインを1つ差し出しながら俺は話しを続ける。
「進めるならここより南の街、サウスまで行きたいと思ってる。少しでも知っていることを教えて貰えると助かる」
少し考え事をしたようなしぐさを見せるが決心したようだ。こちらを真直ぐ見つめてきた。
「・・・なにか事情でもあるようだね。わかった。俺の知っていることを話そう」
そして街の周囲の魔物について色々と情報を得ることができた。初見では気づけないような情報も多くあり、彼らがどれほど苦労して魔物へ対処してきたかが痛いほど伝わってきた。
「想像以上の情報だったよ。これじゃあ足りないな」
そう言ってもう1枚コインを差し出す。正直これでも足りているかは微妙だがまぁそれは黙っておこう。
「俺達の集めた情報が役に立ってくれたら嬉しいよ。じゃあ俺はもう帰るよ」
それにしても依頼を受けるわけでもないのにどうしてここにいたのだろうか。きっと冒険者というものは何もなくてもとりあえずギルドに向かう癖でもついているのだろう。
『すさまじい偏見ですね。言いたいことはわかりますが』
だろぉ?まぁおかげで会うことができたのだから感謝しているんだがな。
「さて、と。もうここで集めれる情報はないかもしれないが一応聞いて回ってみるか」
冒険者同士で情報を共有しているだろうから新たな情報が得られる確率は低い。しかし、せっかくここに来たのに取りこぼしがあってはもったいない。
『程々でやめて別の場所に言った方がよさそうですが・・・しかし、彼らほど魔物に向き合っている人もいないというのも間違いではないです。貴方の判断に任せます』
俺でもわかることをわざわざ言わない様にはできないのかなぁ。こういうところが無ければ多少マシなのに・・・スキルはどこまで行ってもスキルなのかなぁ。それともスキルの成長によってこれもマシになるのかなぁ。
「ま、今はそんなことを考えている場合じゃないか」
気を取り直し、他の冒険者にも色々と話を聞いて回った。結局大した情報を新たに得ることはできなかったが魔物に関していえばここで得られないのなら他でも同じだろう。
「収穫はあったかな。さて、もういい時間だ。今日はこの辺で。聞き込みってのは慣れてないから疲れたな。明日はもう少し効率よくできるように頑張ろう」
『今日のパターンを計算し、明日は状況に応じた質問をピックアップできるようにします』
(そんなこともできるのか・・・いや、計算することを。それをされるとお前は答えをすぐに出してしまう。俺自身が考える機会がまた一つ奪われてしまう)
『承知しました』
こうやって一つ一つ言っていかないとこいつは勝手に走り出してしまう。やれやれだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます