第18話 ここが限界?
「なんかみんな疲れている感じだねぇ」
俺達はサウスの街の一つ前の街、ザボワダをうろついていた。
街に入る前から薄々感づいてはいたが皆疲労困憊といった感じだ。
情報収集がてら俺達が遠くから来たことを伝えるとひどく驚かれた。と同時に少し希望を感じていたように見えた。
(まぁこの状況でも来てくれる人がいるってのはありがたいんかな)
「この街の状況についてはもうわかった。別の諮問をしてもいいか」
比較的元気そうなおじさんにこの街の状況を詳しく教えて貰った。予想通りあの地震の後魔物が急に増えてこの街からの行き来がほとんどできなくなっていたようだ。
「それは構わねぇが・・・まぁいい。今のこの街に来る時点で変わり者だ。せっかくだから他はどうなっているか教えてくれ」
俺達はこれまでの旅について話す。おじさんは他の街は大丈夫ということを知って少し安堵していた。
「いや、外の情報ってのがほとんど入ってこねぇから安心したぜ。他の街にいる友人は大丈夫そうってわかっただけで十分だ」
「にしてもこの状況が広まっていないのは誰かが止めていたのかしら。混乱が起きないようにってのが一番ありそうね」
「・・・流通が止まり続けばいずればれるから得策かは分からねぇがな。もちろんこの状況をどうにかできるってなら。おっと、そういえばまだ聞きたいことがあるんだったな教えてくれ」
「この街よりさらに南の街、サウスはどうなっているか。何か知っていることはないか?」
「すまねぇ、他の街のことを気にできるほどの余裕はねぇんだ。それに北の方から来る人はいないってわけじゃないが南の方はさっぱりだ。あの地震以降誰も来ちゃいねぇよ」
「そうか、情報感謝する。少ないが受け取ってくれ」
お礼としてお金と保存のきく食料を提供した。予想外の報酬に驚いていたがすぐに感謝の表情に変わった。
「ありがとう、旅の人。この街もいつ食糧が不足するかわからねぇから助かるよ」
そうなったらこの街が内部から崩壊することは想像に難くない。なんとかして避ける方法は無いのか?
『魔物達を倒しても新たに湧いて出てくると考えられますのでこの辺りで長期的に生活するのは困難と考えられます。すぐにでもこの街を出たほうがいいとは思うのですが・・・』
(そんなことを言ってもこの人たちにだって住むところがあるんだ。簡単にはい出ていきますとは言えないよ)
『命あってこそなのでそういう感情的なことは今は言っている場合ではないのですがね』
「さて、この街で長居するのはあまりよくなさそうだな。このまま進んでいってもいいんだけど・・・どうする?」
「行けるところまで行ってみたい。我儘かもしれないけどやっぱりこのまま何もせずに帰るのは嫌」
「ちょっとあんたら。ここより南に行くのか?悪いことは言わない。やめておいた方がいい。ここまで2人で来れたってことは実力はあるんだろうが・・・」
「多少は自信がある。そんな俺達でも危険なのか?」
「地震の直後南の方の様子を見に腕利きの冒険者達が見に行ったんだ。だが誰一人として戻ってこねぇ。だからこの街より南はもはや人類のいける場所じゃねぇってことになっている」
「そんなことになっていたのか・・・外の街からはそんな情報全然入ってこなかったから知らかなかった」
「そういう訳だ。だからやめておけ」
おじさんの必死の説得もあり、すぐにサウスの街に行くということは一先ず中止になった。とりあえず何か考えないとな。
宿へと戻り、一人ため息をつく。
「とは言ってもこのまま帰るってのはな・・・やっぱり2人というのが一番ネックになるか?」
『サウスの街までは3日程だそうです。順調に行けた場合ですのでもっとかかる可能性も十分にあります』
「この際突っ切るくらいの覚悟を決めていく方がいいか?」
『サウスの街がどうなっているか分からないのでお勧めはしません。引き返すことも考えなければ自殺行為です』
だよなぁ。この街までとは明らかに違う。甘い考えを持っているようじゃだめだよなぁ。
「1人でぶつぶつと・・・こっちまで聞こえてくるわ。大体何に悩んでいるかはわかるけど」
「そうなんだよ。手詰まりだ。困ったよ」
「やっぱり私達だけじゃ無理だったのかな」
「諦めるのはまだ早い。2、3日はここにいる予定だから何か思いつくかもしれない」
「そ、そうね。ガラにもなく弱気になってたわ。しばらく別行動で情報を集めましょう。そのほうが効率的でしょ?」
「わかった。そうしよう。さて、今日はもう俺は休むぞ。長旅続きでいつも疲れているからな。休めるときに休んでおかないと持たない」
俺はベッドに横になるがユカは少しでも情報を集めたいと出ていった。まぁ無茶はしないだろう。そう思っているうちに寝付いてしまい、気づけば朝陽が差し込んでいた。
「・・・ちょっと寝すぎたか?まぁいい。時間はあまりないからな」
隣のベッドで爆睡しているユカを置いて活気のない街へと踏み出した。
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