第12話 また試され
最初の時より明らかに歯ごたえの良くなった兵士、鋭い一撃を放つ執事相手に俺とユカは善戦していた。
兵士たちはどうか分からないが執事は俺の雰囲気が変わっていることに薄々気づいているようだった。
『今のところこちらが優勢ですね、ユカ殿が窮地に立たされない限り大丈夫そうですが向こうもそれをわかっていそうですね』
調子が変わったのは俺だけでユカは今まで通りだ。ユカにも何かそういうスキルがあるのかもしれないがそれは俺は知らない。寧ろ俺以外は知っている可能性すらある。
(ともあれ大分兵士の数も減ってきたな。こちらも疲れてきたがこのままいけば執事一人になる。そうなれば俺達の勝ちだ)
そう思てしまい少し油断したのか、俺の横を通り抜けてユカへの接近を許してしまった。
しかも通り抜けていってのは執事だ。すぐにユカの方へ向かいたかったが残り全ての兵士たちが足止めしてきたため近づくことさえできない。
『ここはユカ殿に任せるしかありませんね。兵士たちを全員倒すまでには少なくとも3分はかかると予想されます』
3分という時間に絶望する。戦場においてはあまりにも長い時間。そんな時間を魔法使いが近接戦闘が得意な相手を目に前に戦えるはずがない、そう思っていたのだが・・・
『どうやらこちらに集中すればいいようですね。執事もこちらへ向かって来る様子もなさそうです』
何が起こっているのか確認することもできないが今はそれを信じるしかない。目の前に立ちはだかる兵士たちを1人、また1人と倒していきついに最後の一人を倒す。
すぐさまユカの方を見るがどうやらまだ決着していないようだった。ユカが無事であることで安堵したのか急に力が抜ける。
『スキルを長時間使いすぎたようですね。一先ず解除することをお勧めします』
疲労感に耐えられず仕方なく、スキルを解除する。余計に体が鉛の様に重くなる。正直今から執事を倒すのは不可能だ。後はユカに任せるしかない。
「・・・どうやら貴方も限界のようですね」
こちらの様子を察した執事はユカの方に集中する。しかし、俺のいない状況でどうやって耐えていたのだろう。その答えはすぐにわかることになる。
執事がユカめがけて踏み込み、短剣を突き刺そうとする。鋭い突きで当たれば大怪我待ったなしだ。
しかし、何かに阻まれたのか彼女から1メートルくらいの場所で弾かれる。
『どうやら何か結界のようなもので守られているようです。見たところあの執事に有効打はなさそうです』
(じゃあ俺達の勝ちか?)
『あの結界に制限が無ければですが、もし執事がそれを狙っているとすれば私達も加勢に向かわなければいけません』
そんなことを言われても・・・今向かっても返り討ちにあってしまう。今の状況は俺がユカを助けるのではなく、ユカが俺を助けている状況だ。
(今から俺は戦力になると思うか?)
『感覚強化を再び使ったとしても数秒といったところでしょう。ユカ殿がこちらの意図を察してくれれば執事が気を取られた隙に何かしてくれそうですが』
そういった打ち合わせは一切していない。しかし、このまま見ていてはいけない、そんな気がしてならなかった。
(あぁ、もう。腹をくくるしかねぇ。もう一度スキルを使う)
ふらふらしながらゆっくりと近づいていき、これ以上近づいては危険だという距離で再び感覚強化を発動させる。
執事はこちらの動きに気付き、一撃で俺を仕留めようとするが生憎動きは見えている。速さでは圧倒的に向こうが上だったが動きが読めるなら対処は可能だ。
ふらふらの俺に鋭い一刺しが襲い掛かるが俺はそれを完璧に受け止める。まさか止められるとは思っていなかった執事に動揺が走る。
もちろんこれが限界だ。受け止めた手から力が抜ける。そこで執事は俺がもう動けないことを確信しとどめをさそうとするが、ここまで攻撃してこなかったユカがついに執事に向かい攻撃魔法を放つ。
短いとはいえ、完全にユカから気を逸らしてしまったのは間違いだったな。後は何もすることのできない俺は発動される魔法をただ見ていた。
「参った、私の負けです。貴方方の実力はよくわかりました」
流石に直撃しては命が危ないと判断したのかあっけなく降参してきた。ということは俺も危なかったのか?という疑問ができてきたのだがまぁ勝てたので良しとしよう。
『発動しようとしていた魔法はおそらく魔弾を撃ち込む系のものでしょう。彼女の手の周りに魔力が集まっていっているのを感じました』
うーん、なら大丈夫だったのかなぁ。分からないからやっぱり聞いておこう。
そんなこんなでアンデレと話しているとユカがこちらへ向かってきた。
「貴方、ものすごく強いのね。私の屋敷にいる兵士達は結構研鑽を積んでいるから並の冒険者では太刀打ちできないはずなのにそれを20人も相手できるなんて・・・私の方が強いとか思ってたけど全然そんなことなかったわ。ごめんなさい」
「おいおい、俺も甘く見られたもんだな」
勝った実感を得たせいか、はたまたスキルを使いすぎたのか分からないがもう限界だ。俺はゆっくりと目を閉じた。
その後俺が目を覚ますまでの間このまま起きないだなんだで屋敷内てんやわんやだったが、1日後に無事に目を覚ます。
「よかった。心配したのよ。急に眠るからどうしたものかと心配したの」
どうやらユカがつきっきりで見ていてくれたらしい。ユカも疲れていたであろうに。
「もう大丈夫だ、少しばかりスキルを使いすぎたようだ」
「そういえばお互いにどういったスキルや魔法が使えるのか紹介し合う時間も無かったわね。これから一緒に旅をするんだもの、隠し事無しで行きましょ」
目覚めたばかりというのに急にか、大丈夫と入ったがもう少しゆっくりしたいよ。
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