嗚呼、垣中総合部

郷新平

垣中総合部

ある昼下がり、垣野中学の総合部に一人の男子生徒が入る。

総合部は運動も文化もやりたい、そんな欲張りな人のための部活だ。

男の名前は富田(14)容姿は下の中で思春期真っ盛りの悪名高い、総合部の部員である。


つまらない授業が終わり、またしんどい時間が来た。こいつらと顔を合わせないとなると気が重いぜ、そんなことを思いつつ、俺は部室のドアを開けた。


富田がドアを開けると筋トレをしてる奴2名、将棋を指してる奴2名、ボンテージを着用し、鞭を振ってる女と全裸で興奮してる野郎一名、奥の方でパソコンに座り作業してるの一名。


全く、まとまりがなく、しょうもない奴らだ、そう思いつつも気の優しい俺は挨拶をすることにした。

「宜しくお願います」

近くにいる腕立て伏せをしている野郎が振り向く、

「宜しくお願いします」

ハキハキとしたいい返事だ。この元気のいい奴は中田(14)同じ、総合部の部員で部長を務めている。元気のいい奴は嫌いじゃないが何故か、女子にモテている。

今日も来る前に浅瀬さんからラブレターを中田に渡すよう頼まれたが、「奴は今、女に興味ないぜ」と言って、断ったところだ。

中田を睨みながら腕立て伏せをしている野郎が前を見ながら、返事を返す。

「宜しくお願いします」

このスポ根野郎は海藤、筋トレにしか興味がないのに女子にモテる不思議な野郎だ。

浅瀬さんから「じゃあ、海藤君に」って言って、同じラブレターを差し出されたが

「あんた、マッチョになりたいの?」って言って、手紙を受け取ろうとしたら、手を引っ込めた。正直な女は嫌いじゃないぜ。

盤上を眺める二人の横を通り過ぎると

「宜しくお願いします」

と一人が声を掛けてくれた。

声を掛けてくれたのは、山内(14)、盤上のゲームでは向かうところ敵なしで、一つだけに縛られたくないからと、総合部に来た嫌な野郎だ。

「そういえば、髪型変えたね、似合ってるよ」

俺はにっこり笑って

「おう」

と言った。

そんな、いい奴の前で自分の実力相応に悩んでいる奴は沢田(14)

この対局を真剣に取り組んでいるので、邪魔をしないように通り過ぎることにした。

情事?か一方的な攻めと言っていいのか、解らない行為に耽る男女に他の部員は空気のごとき、対応を取るが、優しい、俺は変態な男女にも声を掛けることにする。

「大丈夫か?」

女はこっちを見つめた。

俺はコクコクと頷くと女は上から制服を着て、帰って行った。

俺は蹲る、変態一匹を見下ろし、蔑んだ目で見つめる。

「もう彼女帰ったぞ」

見られていることに気付いたのか、更に顔を赤らめ、悶えた。

どうせ日頃の鬱憤を晴らしますといって、女を募集したのだろう。

全く、そういうのは学校でするんじゃねえよ。

この変態は関(14)ここだったら、何となく受け入れてもらえそうだという理由で入った、変わり者だ。

そして、最後にパソコンに座っている。気弱そうな男、

「宜しくお願いします」

安田(14)はこっちを振り向き、俺に優しく微笑み、挨拶を返した。

なんて、美少年だ、こいつが女だったら、即、告白している所だ。

だが、俺はこいつに非情な報告をしなければならない。

「安田、お前は今日で退部だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る