第80話.『国際情勢』

国際関係は人間関係と似ている。

おおよそ「明而(めいじ)」は、「明治(めいじ)」と文明水準は同じような推移をしているようである。

しかし識者の存在が歪みを生んだのか、私の知る歴史認識と食い違っている所がある。穂高進一、私の各国に対する今の理解をまとめておこうと思う。



清国

日清戦争が起こらなかった。史実よりも上手く立ち回っているようで、朝鮮半島も実質的に支配している。強国の一国であり、アジア圏における影響力は大きい。

ルシヤ帝国のアジアにおける影響力の増加を危惧しているために、ルシヤと対立関係にある日本国には友好的に接している。

国債発行先、戦費調達先の一国でもある。



英国

史実より影響力が小さいように考える。アジアにおける植民地化政策には出遅れている。他国のアジア進出を妨害し、自国の影響力を強めようという意図もあるのか日本には協力の姿勢をとる。



仏国

英国への当てつけだろう、ルシヤ帝国を支援。



独国

ルシヤの南下政策の矛先をアジアに向けるためにも、ルシヤ帝国に協力の姿勢を見せている。

アジアへの植民地化を推進。日本を含むアジアはヨーロッパ諸国で分割して支配すべきだという思想のようである。



日本国

我が国であり、まさに存亡の危機にある。史実の日露戦の勝利は綱渡りの連続であったと考えているが、まさか自分が同じような綱渡りを強いられるとは夢にも思わなかった。

ルシヤ帝国の侵略、列強の植民地主義に対抗して国家を守らなければならない。

隣国(清国、ルシヤ帝国)と対等な話し合いができるように国力を高め、そしてそれを見える形で表現する。そういうことが必要である。



ルシヤ帝国

不凍港(年中凍結しない港)の獲得を最大の目的とした、南下政策を取る。広大な領土を持つも、大陸の北部に位置するルシヤは冬が厳しく、広く国民にも温暖な地を求めようとする心の動きがある。

ルシヤと日本の雑居の地、すなわち北部雑居地。明治で言う北海道を巡って武力による衝突が起こった。雑居地の占領、ついには本土の侵略を目論んでいるだろう。



なんにせよ人権だとか権利だとか、そう言った人間個人に対する意識は薄い。

ただいま現在は各国ともに自国を富ます為に喰い物を探し、植民地を広げている。そしてそれが良しとされている時代、そう言った世界である。

その中で我々は、何者にも害される事なく国家というものを守り抜かねばならんのである。



※識者(しきしゃ)

前世の記憶を持つ者。穂高以外にも各国に存在するらしい。浅間中将の話では、少なくともルシヤと清国には居ることが確認できているようだ。

他の者がどの程度の記憶を引き継いでいるのか、またいつの時代の記憶を持っているのか、それらは明らかではない。

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