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永遠の愛とは言うけれど、それはきっと本当の意味の『永遠』じゃない。
だって、死んじゃったらそこで終わりだもん。
ひょっとしたら『死ぬまで忘れない恋』とか『生涯を懸けた愛』みたいなのはあるかもしれないけど、それも精々五十年とか六十年くらいでしょ? 永遠には、程遠い。
でもよくよく考えてみたら、私たちは本当に『永遠』を望んでいたのかな。
『永遠の愛』なんてロマンチックだけど、でもそれはきっと傍から見てる場合の話で。
だって、例えば私が魂を賭して書き上げた渾身のラブレターが三千年後の人間にまで晒し上げられてたら、きっとすっごく死にたくなる。その頃にはとっくに死んでるけど。
だからね、私が求めてるのは『永遠』なんかじゃない。
それはきっと、短い人生の中で、ただ決して冷めることない熱なんだ。
■
君が余命を宣告されたのは、二年前の夏だったよね。
すっごく治すのが難しい病気だったか、もしかしたら治す方法のない病気だったか、とにかくそんな絶望が君と私を蝕んでさ。
私ね、本当は泣いてたんだよ。
君がいなくなるなんて、そんなの信じられなかった。
バレてたかな? バレてたよね。君の優しい微笑みの意味は、そういうことだよね。
でも、バレバレだったとしても、せめて君の前では立ち続けていようって、安心して今日や明日を生きてほしいって、そう思ったから私は言ったんだ。
「私、毎日会いにくるから」
距離とか、時間とか、そんなチンケなものより大事なものがあったんだ。もちろん、君のこと。
だから何がなんでもって気持ちで、半分くらいは自分のために、君に言ったんだ。
そしたらね、君はさ、私をびっくりさせてくれたよね。
「――うーん。そんなことよりもさ、君が私を殺してくれない? 今、すぐに」
■
日々は続いていく。
明日は、望んでなくてもやってくる。
そしたら、今日が一番新しい日になって、昨日は過去になる。
忘れていく。消えていく。
君がいた世界が、君を知る世界が、どんどん小さく、遠くなっていく。
それでも、私の中の君は消えない。
一生、きっと死ぬまで――この手に、この胸に、魂に灯った熱は、消えない。
もし自分がいなくなったあとも、誰かの心に住めたなら。
たとえ世界に忘れられても、たったひとりの魂に宿れたら。
それって、『永遠』って言っても、いいんじゃないかな。
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