第2話
「ではまずシンプルにこちらをお召し上がりください。」
「ジャムタルトなんて味気ないわね。」
ジャムタルトは庶民のお菓子として有名なモノで、貴族のお茶会ではこんなものしか出せないのかと馬鹿にされる品として囁かれる。
領主である夫が居るからそのことも解っているはずなのに敢えて出したのには何か仕掛けがあるはずだと再度見るが何ら変哲のないタルト生地とジャムだ。
「まあまあ、一口食べてみなさい。
ここの店主はお茶を尊重したお菓子を出す。」
「お茶も出ていないじゃない。」
お茶も出ていないのにお茶菓子を食べろだなんて。
でも、食べてみないことに文句が言えないのは当然の事。
一口食べると、世界が変わった。
「苺と薔薇のジャムね。」
薔薇の花びらをトロトロになるまで煮詰め、苺を形が残る程度に煮詰まるように調整された一品。
敢えて素朴な見た目にして、この驚きを作った。
「ではお茶をお楽しみください。」
そして静かに紅茶の入ったティーカップを置いた。
他にも先ほどよりも小さなジャムタルトの3種の盛り合わせが置かれていった。
「私の例のモノを楽しみに待っているよ。
すまないね。
この店の雰囲気を壊してしまって。」
「もう少しお待ちを。
それと、私は気にしておりませんので大丈夫ですよ。」
夫たちの話は梅雨知らず。
この店の料理に魅せられていた。
今度のジャムタルトは花や宝石、芸術の領域の絵がジャムとゴマなどで描かれていた。
そして紅茶を嗜むと、これが合う。
ジャムタルトがあれだけ衝撃的な香りだったのに、紅茶の香りが一切ぶれていない。
どことなく自然体になっていく。
リラックスしていく。
もひとつジャムタルトを食べると。
今度はゴマの風味と甘酸っぱいラズベリーともブルーベリーとも似つかない味のジャムに蕎麦の香りがした。
今度は打って変わって爽やかな香りと香ばしい香りの集合体。
でも、紅茶を飲むと主張し過ぎない程度に抑えられているのが良くわかる。
ここの主役はあくまでも紅茶なのだ。
小鳥のさえずりが心地よく聞こえる。
柔らかな日差しが暖かみをくれる。
美味しいお菓子がお腹を満たしてくれる。
紅茶が心を満たしてくれる。
夫が黒い飲み物を飲んでいるのに気づくことも無く、ただのんびりとした貴族の生活では久しく忘れていた子どものお昼寝のような時の流れを実感していった。
侍従たちは奥様のここまでリラックスされた表情を初めて拝見した。
彼女を満足されていなかったのは自分たちの仕事がおろそかであったと自覚させるには十分だった。
出しているものは何ら大したものでは無いと思う。
でも、この空間が仕事を忘れさせてくれるように気持ちのいい心遣いがされていた。
ここに足を運ぶ主人である領主様もそうだが、彼を満足できる空間を作れないか。
屋敷に戻ったら考えようと強く決意した。
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メイン小説
換金スキルとショップスキルでバグ技現代無双〜無限に増える1円玉でスキルを買いまくる~
酔っぱらってダンジョン行ってたらお姉さん持ち帰りしてて朝チュンしてた件~スキル乳化の美肌ボディエステは女性冒険者を虜にする~
こちら二つもよろしければ拝読ください。
次回、Vtuberを出す予定です。
どんなキャラを出すかはまだ悩んでいますので投稿が日を跨ぐやもしれませんがご了承ください。
スライム道
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