第47話 ルー

「そこの人、見かけない人ですが主様の御前で何をしている。」

 まずい。一番見つかってはいけない人に見つかってしまったかもしれない。ゴブリンは精霊であるはずなのに、今のルーは鬼のような形相をしている。

「いやー。僕は、あー…その、偶々この辺を通りかかった旅人なんだけど。この辺って通ってはいけなかったですかね?」

 誤魔化そうと小手先の嘘をついた。

「そうですか。ここって結構この集落の真ん中ら辺なので、知らない人が歩いていたら多くの人が集まってきそうなものですが、見つかっていないということは忍んでいたということか!」

 失敗か。ここは一回離れたいな。でも、逃してもらえなさそうだ。

「お前逃げるのか。それは怪しいと自ら認めているようなものだな!主様に仇なすものは許さないぞ。」

 そう言って、ルーは棍棒を抜いてこっちに向かってきた。多分攻撃に当たってもこの姿を形成するのは魔力だから実害はないけど、絶対にトラウマになるから当たりたくない。この姿で魔法を使えるかはまだ試していないから、本体から魔法を打とう。

「おのれー!主様に害を与えようとしたことを悔いるが良い。」

 ドーン。


 寸前に迫った一撃を土の壁を挟むことで相殺した。

「主様。何故邪魔をするのですか。ここは私にお任せください。」

<その人は僕の知り合いのグルメって人なんだ。悪い人じゃないから安心して。

 嘘だけど。あの姿を使って自由に動きたいから、しょうがないよね。僕だとバレるとちょっと面倒くそうだし。

「失礼いたしました。主様の客人に失礼をはたらいてしまったこと、命をもって償うべきでしょうか。」

<その必要はないから!

 怖い。本当にしそうな雰囲気だったから、尋ねてきてくれて良かった。

<みんなに紹介しといた方が良さそうだから夕方仕事終わったら集まってってことを伝えといてくれない?

「了解しました。直ちに伝えて参ります。では失礼します。」

 ふぅ。怖かった。なんとかなった。

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