中盤 3時間・2.5メートル


「ずいぶん減ったな」



 無心でその時を待っていると、遥か天から声が聞こえてきた。例の化け物の内の一体だ。



「まあ、いい。ここまで生き残った。きっと選りすぐりの連中だ」



 何か、ピンセットのようなもので別のコンテナに積み込まれて行く仲間たち。化け物は熱に苦しむ仲間の姿をその大きな目で観察している。そうだ思い出した。こいつだ。



 この化け物だ。天国から連れ出された時、意識を失う直前に見た個体。その時も戯れのように仲間たちのひとりを、



 バリ、パキ、と。今もそのピンセットで掲げていた仲間を、食べやがった!



「お前ええええ!」



「おや、まだ大物がいたか」



 ピンセットに捕まる。離せ化け物め!



「君はこっちだよ」



 液体から取り出され、光と熱の地獄が疲弊した体に追い討ちをかける。どこへ連れていく気だ。絶対にろくな目に遭わない。何とか脱出を。



「やっときたね。今がその時だ」



 抜け出そうともがく中、何時間かぶりにラドクリフの声を聞いた。頼りになる先達、戦友が。パニックになっていた頭が冷静になる。彼がいれば乗り越えられる!



「全力で逃がす」



「え?」



 側面。先端がギザギザとしていてこちらを逃がさない悪意にまみれたピンセットと、自分の肉体との僅かな隙間から声が。



「約束してくれ。最後まで生き足掻け」



 変わり果ててたラドクリフの残骸が私を押し出して、



「おっと、逃げてしまった。活きが良いな」



「……わかったよ!」



 私は光と熱の地獄の底へと叩きつけられた。



 勢いのままに深い谷のような場所に滑り込む。強烈な光が遮られ、視界は確保できた。まだマシな状況だな。熱により体を軋ませながら、ラドクリフとの約束だけが頭に鳴り響いていた。



「最後まで、足掻く!」




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