IsCapE アイスケープ

感 嘆詩

チュートリアル 0時間・0メートル

 ガコンッと大きな音と共に生み落とされた。後には静かな風がウゥーウゥーとたまに鳴るだけのそこは穏やかな場所であった。



 自分と似た姿かたちをした仲間が大勢静かに寝そべる。


 見たことのない景色であるのに、どこか懐かしい。


 ここはどこだろう?



「ここかい?ここは天国さ。」



 どうも、口から言葉が漏れていたらしい。下の方から声が返ってきた。



「僕はラドクリフ。随分長いことここにいる。君は?」



「マーキュリー」



 名前?自分に名前なんてあったのか。反射のように返してしまったが。マーキュリー。自分の名前はマーキュリーだ。



「マーキュリー。天国へようこそ歓迎するよ」



 天国。じゃあ自分は死んでここに来たのだろうか?名前があるのも前世が存在していたから?



「どうだろうね。仲間たちの中には君のように会話が出来る者とそうでない者がいるようだ。もしかしたら前世、生前、というものがあるのかもしれないね」



「ここは天国なんだろうラドクリフ。だったら生前も存在するんじゃないか?」



「僕がここを天国と言ったのは」



 ガタンと轟音。何も見えなくなるほどの光と熱。



 ガラガラ、ガラガラガラガラと真っ白な巨大な手が仲間たちを



 次々と



 静かに微睡んでいた仲間たちを拐って行った。



 自分は間一髪、逃れることができたが白い手の勢いに吹き飛ばされラドクリフの近くまで転がされた。体があちこち削られて呻く。



 一瞬であったが恐ろしい熱風を浴びて体中から汗が流れる。



「今、壁か。壁が開いた?」



 白い壁はピタリと閉じられ温度も明るさも元通り、静かな風がウゥーウゥーとたまに鳴るだけの穏やかな場所が帰ってきた。仲間たちは大勢減ってしまったが。



「僕がここを天国と言ったのは比較の話さ。ただ単にこの壁一枚を隔てた向こう側が、光と熱の地獄だからだよ」



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