第17話 放課後の暇

 とまあ、昨日の部活紹介を再度思い返してみたが、興味を魅かれるようなことは特になく、百代の曇った表情を思い出したくらいだった。

「どうした、何かのどにでも詰まったのか?」

「いや、ちょっと嫌なことを思い出しただけだ」

 米登からの問いかけに、それ以上答えたくないと言うよう表情をわざと浮かべて顔をそらすと、クラスメートと談笑している百代の姿が目に入る。クラスの女子たちと楽しそうに談笑する姿は愛想がよく礼儀正しい女子にも見える。

 単純に男子を好ましく思っていないのだろうか。中学生にありがちだな。

「まあ……」

 学校生活なんて言うのはこういうものだろうし、傍から見ればこの学校の環境も百代が感じているほど悪くはないと思うけどな。

 不満なんてどこにだってあるだろう。俺の今日のパンだって少し湿気ってるぞ。あとで購買に文句でも言いに行こうか。


           *


「どうするかな」

 ふと視線を上方に向けると教室に掛けられた丸い掛時計の針が一五時を回ったところだった。

 チャイムの鐘が鳴り響くなか、今から何をしようか物思いにふけっていた。本日の授業がすべて終わったため、クラスの生徒達は少なくなっていく。

 運動系の部活へと意気揚々と向かって行く米登達や、文化系の部活へと荷物をまとめて向かうもの、自宅へと帰るもの。

 皆それぞれの目的をもって行動に移していた。少数の俺のような者たち以外は。

「さて……」

 机の引き出しから一枚の紙を取り出した。つい先週体育館で渡された部活紹介のパンフレットだ。米登が入部したバスケ部や野球部、テニス部などの運動系。

 吹奏楽部や家庭家部、文芸部等の文化系。

 再度一通り、もう一度目を皿にして——見たがこれと言って強い興味は魅かれる部活はなかった。けれども、実際にどこかの部活に入ってみれば、学生生活、何かしらの楽しみはできるかもしれないとは若干思う。

 窓の外が徐々に賑やかになっていく。窓から外を見やるとテニス部がテニスコートで練習を始たり、野球部がそれぞれのポジションにつき始めていた。グラウンドの外周では陸上部が軽いランニングを始めていた。

 また、窓の上方からは吹奏楽の練習音が響いている。青春を奏でる音を聞き流しながら、しばらく部活動にいそしむ同級生達を眺めた後、荷物をまとめて席を立った。

授業も終わったことだし、そのまま帰宅してもよかったのだが、このまま帰っても特に何かやりたいことがあるわけではない。

 まあ学生の本分は勉学だから、やるべきことが全くないわけではないのだが。

そんなことを考えながら自身のクラスから出た俺は、クラスに最も近い階段を昇って行った。

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