変わらない想い

紫陽花の花びら

第1話

「なぁ、明日出かけよう」

「はぁ?どこに?」

お前はそうだねと言う言葉を知らないのか?

はぁ~気持が萎えるんだよ。


「いや、別にどこに行こうとは決めていないけど」

「ふ~ん、何にも考えていないんだ」

いやいや、決めていたらそれはそれ文句言うだろう?

「どこか行きたいところあるのか?」

「別に……」

「じゃぁ止めるか……」

「何でそうなるのかなぁ、一緒に考えようとか言えないの?ったく、気が利かないんだから」


あ~これ以上続けたら……喧嘩になる。

何故?いつも俺が折れるんだ。


いつも俺の言葉が足りない体で来るお前はさぁ、いつも後出しジャンケンだろうが!むかつくんだよ。


お前は、俺のこの言葉を待っているんだよな。

「お~悪かった。言葉が足りなかった」

はいはい、いつもは揉めたくないから、そのくらいって我慢していたけど。

今日は無理だ。

俺は物凄苛ついているんだ!


 昨夜、俺はお前を誘った。

久々にお互い仕事が一段落して、のんびり過ごしていた俺たち。

「好きだよ……」

耳元とで囁くと、

「しないよ!疲れてるからさぁ、処理するなら手伝うけど」

おい!するとかしないとかの前に言い方あるよな。


そりゃ新婚じゃありませんけど、

たまにはムードも大切だろう。


俺が疲れてるからなんて言ったらどうなることか!

一回口滑らしたら、二カ月触れることも出来なかった。


 最早十年か~会話もセックスもおざなりだよな。

俺は……俺は……辛いよ。

何で俺たちは一緒にいるんだ?


「なぁ、お前にとって俺はなに?」

「ハア?なに?って、旦那でしょ。それ以上でもそれ以外でもないよ。」


旦那ねぇ。

「旦那ってなに?」

「ちょっと!もう!一緒にいて安心安全な存在だよ!」

なんだそれ?

警備の人ですか?

「じゃあ、あなたにとって私は何?」

「……答えない!」

「へぇっ!子供か?」


 俺はその瞬間別れると決めた。

短絡的過ぎるのは重々承知だよ。

然し、切ないだろう……

熱烈に愛し合って結婚為たはずなのに

なんだあの答えは!馬鹿に為やがって。


「コンビニに行って来る。」

「あ~アイス買ってきて!いつものバニラね!」 

阿呆買うか!俺は返事もしないで部屋を出た。

 うっぷ~寒~頭にきすぎて上着忘れた!

 歩きながら想い出す。

でもなぁ、あの頃は可愛かった。

二日間逢えないだけで泣いて電話為てきたり、逢えば帰りたくないって駄々捏ねてさ。

ありゃ同じ人間か?


 俺はコンビニを通り越して、 ただ歩いていた。

無邪気に笑いあって愛し合って。

もう離れられないって思った。

今も恋してるんだよお前に。

体型少し変わっちゃったけどなっ。

それなのに泣けるよったく、馬鹿な俺。

帰ったら、きちんと話そう。

別れることを……そう別れる。


俺は一体何を望んでいるのか?

労りあいたい。

癒しあいたい。

愛いしあいたい!

それだけだ。

女々しいのか俺?


それに俺はヒモじゃない!

旦那だぞ!


 気がつけば、二時間も歩いている。

この遊歩道を行けば、あいつの好きなアイスが売っているコンビニだ。

いかねえよ……誰が行くものか。


 チリリンチリリン、避けてやり過ごそうとしたら怒鳴り声、

「なにやってるの!何時までも帰ってこないで!」

「煩い!」

ガシャーン……

お前は自転車を放り出して、背を向けて歩き出す俺にしがみ付いてきた。

震えているお前。


「怖かった……もう帰って来ないかと思ったの」

それでも振り向けない俺。

「判っている。いけないって思うのに、気持より先に言葉が出ちゃうの、優しく為たいのに……意地悪ばかり言っちゃうの、ごめんね、ごめんね、こっち向いて……お願い!ウッ……」

号泣するお前。

抱き締めた、折れるほどに……

歌の文句ではないが。


あの頃のお前だ。

顔つきも声のトーンも

あの頃のお前だ。


「上着……風邪ひく……」

そっとかけてくれるお前。


 俺は、倒れた自転車を起こしてお前を後ろに乗せた。

「いけないんだよ……二人乗り」

「判ってるよ、遊歩道の終わる手前まで」

頷くお前が愛しくて唇を重ねた。

「嬉しい……」


そう呟くお前の重みを感じながら、ペタルを踏み込み、少し蹌踉けながら徐々にスピードをあげる俺。

抱きつくお前。

ああ~懐かしい~この感触。


「アイス買おうね」

「嫌だね 寒くなる」 

「お部屋温かいもん、ねっ!良いでしょ?」

少し黙ったお前が

「じゃぁ、おでんとアイスね」


自転車から降りたお前は、

「俊……もう一度……」


ガターン


これで二度目の打撲をした自転車には申し訳なかったけど。


どうしてもしたかった!

どうしても言いたかった!  

一番大切な人!


「早紀に恋してしる」

「俊……一緒」

あの時の告白が聞こえてくるようだった。


冷たいのに温かいあの時と同じ風に包まれてひとつになる。


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