【男性向けシチュエーションボイス】ボクの痣を花に例えた君を愛したいと思った【フリー台本】

雪月華月

ボクの痣を花に例えた彼女を愛したいと思った

そんなに、ぼんやりして・・・どうしました?


気が抜けてしまってた……なるほど

よっぽど疲れているのですねぇ、帰省というものに


いえいえ、私は気にしませんよ・・・うちに来たお客さんなんですから


んー、まあ、ぶらぶらと山にまで散策したら迷ってしまった・・・という方を、お客さんといいづらいかもしれません


でも、私にとってお客さん、そういうことでいいじゃないですか

深く考えたら、ま、け・・・ですよ


ウンウン、分かっていただけて嬉しいです

久しぶりの帰省と言ってましたけど、帰ってきたのはどれくらいぶりなんですか?


ああ、それは、なかなか・・・ふふ、盛大に迎えてもらっていいじゃないですか


盛り上がりすぎるものですよ、そういうものです

穴を、埋めたいものですよ、そう、穴です・・・


(ささやき)人はみんな、穴を埋めたいものなのです・・・心の穴を


しばらく会えなかったら、寂しいものですよ

家族や友人の顔なら、なおさらってもんです

あなたの居なかった時間を、埋めようとしてる・・・


あぁ、ちょっと語っちゃってごめんなさいね

思うところが多くて


・・・はい・・・私を待つ人ですね・・・随分待っております

どれくらい・・・数えるのはやめました・・むなしくなっちゃうので


それにしてもだいぶ顔色がよくなりましたね

うちに来たときは、迷いすぎたんでしょう、だいぶくたびれてて

ええ、ずいぶんひどい顔色でしたよ


このまま、迷っていたら冗談抜きで大変だったかも


(囁き)どうしました? そんなに目を丸くして・・・

顔が近い? ああ、近くしてます


あなたの顔をよく見られるように


私、人の顔を見るの好きなんです

人って、いろんな顔をするから

まあ、笑顔とか喜んでいる顔の方が好きですけど


私は何もするつもりはないので・・・

せめてうちに来てくれた人の顔をしっかり覚えていたいのです


寂しいから・・・ふふ、本当ですよ


寂しいからこんなことをしてしまう・・・

待ち人が着(こ)ず・・・ですから


私が優しいですか?

そうでしょうか・・・迷った人を助けるのは、当然かと


そんな、優しくされないこと、ないと思いますが・・・気にならないのかと言われても、気になることは・・・え、顔の、痣?


ああ、目元に紫の花が咲いてますねぇ・・・そうですか、地元ならまだしも、今暮らしているところでは・・・


とても頑張られていたのですね、あなたから暗い空気がなかった

くじけなかったのでしょう、とても強い・・・うらやましいくらいです


私はその、気にしないというか・・・私が帰りを待ってる人の顔に、傷があったんですよ、事故で、はい・・・


だから私はあなたを見ても、なにか思わなかった

目に紫の花が咲いているっておもっただけで・・・ふふ、変わりすぎていますか、ふふ、そんなものもいると思って下さい


飲み会がつづいてしんどい

お酒が苦手なんですか?


一人飲みが好きと、さっきの食事の時聞いたような・・・

ああ、アルコールで痣が濃くなってしまって・・・


・・・あの、触ってもいいですか? 痣に

ありがとうございます、では・・・


何でしょう・・・私を待たせている人は、顔の傷に触らせてくれませんでした。とても悲しそうな顔をするんです。

こんぷ、れっくす・・・というそうですね


いつも、私に黙っているひとでした

心のうちを、心の弱いところを・・・教えてくれませんでした


寂しかったですね・・・ええ、寂しいですよ

(声を震わせながら)私に教えてくれたって・・・いいじゃないですか・・・・


ぁ・・・私を抱きしめてくれるのですか

ふふ、痛いですよ・・・そんなに強く・・・でも心地良いです

人のぬくもりを感じます・・・あたたかい、あたたかい・・・


だけど、私にかまけちゃだめですよ・・・どうか、離れて・・・この家を出ていった方がいい、その方が、正しいのです


もう・・・

ちょっと・・・ここで、本音を聞き出そうとするのですか?


私の強がりに気づかないのですか?


そんなに優しくしないでください・・・お願いですから

私に優しくしても、無駄なのですよ・・・


私は幽霊なのですから・・・

抱きしめた感触があるから信じられないでしょうけど


ここは私のために存在する空間なんです・・・だから触れられる

でも一歩外に出れば、私はただの幽霊なのです


あなたは優しい・・・だからここを去らせても、気になってしまうのでしょう。少し私のことを語るのであれば・・・


私は山の中に家があって、顔の傷を治すと言って出ていった恋人を待っていたんです・・・でもその人は戻ってこなかった・・・便りも一つもなかった・・・


裏切られたのかもしれませんけど・・・何も情報がないからわからないのです・・・そしてある時、山崩れがおきて、家は押しつぶされました。家に居た私も、巻き込まれて・・・


あなたはこの話を聞いても、私を離さないのですね・・・やめてください、未練を私が持ってしまう・・・私、重いのですよ


・・・待つという呪縛にとらわれて動けないまま、ここに、いるんです・・・だから、私を突き放して下さい・・・あなたまで、私に巻き込みたくないのです・・・!


っ、いやだ、って・・・あなた何を・・・私と、帰るのですか?

現実に・・・・一緒に行こうって・・・そんな、たった一度あった幽霊に・・・


ふ、ふふっ・・・一目惚れ・・・そう、そうなんですか・・・恋はすごいですね


これはもう、私の手を取ることの重さを、教えないといけないかも・・・


・・・いいえ、なんでもありません・・・夜が明けたら、一緒に戻りましょう・・・ただ、ひとまずはこのままで・・・


温もりを感じさせて・・・

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【男性向けシチュエーションボイス】ボクの痣を花に例えた君を愛したいと思った【フリー台本】 雪月華月 @hujiiroame

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