依
恋人が出来た。
こんな僕を好きだと言ってくれたから、付き合ってみることにした。
恋人という表記も、間違いかもしれない。
彼女には悪いけれど、僕は恋心なんてものを知らない。
『君のことを恋心で好きになれるかわからないけど。』
そういう条件を初めに付けた。なんて最低な人間なんだろう。
彼女のことは好きだ。友人として。
一緒にいて居心地がいい。考え方が似ているのか、そこそこ話も合う。趣味も近いものがあり、共に出かけることも多い。
だから僕は、そんな彼女に恋愛的に好かれているなんて微塵も思っておらず、告白を受けたときもとても驚いた。
恋愛ものの作品が好きだ。
だから、恋愛に興味はあった。
物語がハッピーエンドだと泣いていた。
どうしてかわからなかった。
誰かと付き合えば、分かるかもしれないと思った。
付き合って、数日が経った。
彼女とはほぼ毎日のように会って話をしている。
他愛のない会話。特に中身は無いけれど、二人でいる時間を楽しんでいるような、そんな会話。付き合う前と、変わらない会話。だけど少し、変わった距離。
そんな生活で、僕の脳はきっと、彼女に甘えることを許可してしまったんだと思う。
彼女には『僕も好きだ』なんて伝えたけれど、本当のところは違う。
察しのいい彼女はきっと気が付いているんだろうけど。
分かり易い僕のことを、彼女は全て見通している。
…やっぱり僕は、どこまで行っても自分が大好きなだけなんだろう。
愛されることが好きだ。
僕のことを、見てくれるから。
自分が、ここにいていいと思えるから。
満たされるから。
はは、笑えるな。
結局 ”僕を愛してくれる人” という肩書きを持った人に依存することしかできないのだなと痛感する。
つまり、恋って何なんだろう?
一緒にいてドキドキする?相手のことをもっと知りたくなる?自分のものにしたくなる?
未だ正解は分からない。もしかすると、僕のこれも恋なのかもしれない。
世の中では分かるのが”普通”だから、上手く馴染めない。
あーあ。
あ。
明日は試験当日だ。最後の追い込みをしなければ。
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