勇者パーティーを追放されたので異国に亡命したら思わぬ才能が開花して魔王を倒しちゃう話~世の中金だよな~

咲花美優

第1話 ということで勇者パーティー追放

「ということで、マネール。すまないがパーティーを抜けてくれ」

「ん?どういうことか分からないので、説明してくれるかな」


僕たちは今、最高に旨い料理店「サイーゼリアン」にいる。

この店は、信じられないほどコスパの良い商品が並んでいる。中でもこのステーキよ…見てこの肉汁。やばいって。歯ごたえもたまらん…。とれけるわけじゃないけど、確かな噛み応えがまた食欲を刺激する。んんん~この香り!ソースまでたまらん!控えめに言って好き!!それでいて値段はなんと、たったの650キン。

勇者パーティー…と言っても僕らはビンボー王国の勇者パーティーだ。当初は国が援助をしてくれていたが、魔王との闘いが長引き、国の財政が苦しい中、僕らだけお金を潤沢にもらうわけにはいかず…。こうして、世界チェーンの「サイーゼリアン」で食事をしているという次第だ。


で、今日も肉が旨い、と思っていたところ、突然、勇者ビン・ボージャンが話し始めた。


「肉ばっかり食べてるよな」

「おいしいからね」

「俺たちの状況は分かっているか」

「家計簿…じゃない、勇者簿は僧侶のゲセンが管理しているだろ。十分わかっているつもりさ」

「私はドリアを頼んだわ。戦士のナグルーちゃんだって、パスタを頼んでいるわ」

「好きなのを食べるのはいいこと!食事はパワーの源!」

「だがな…分かるか、肉喰らいの魔法使いマネール。お前だけ、月5000キンも食費が高いんだ」

「その分貢献するよ」

「というわけで、マネール。すまないがパーティーを抜けてくれ」

「ん?どういうことか分からないので、説明してくれるかな」


と、冒頭に戻るのである。


いやいや、ちょっと待ってほしい。こんな理由でパーティーから追放されるとかある?サイーゼリアでステーキ食べたら食費がかかりすぎて勇者パーティー追放?いやここはジョージョ園じゃないんだよ?ジョージョ園なら分からなくもないけどさ…。


「ゲセン。収支状況を報告してくれ」

「はい、勇者さま。今月は、ビンボー王国から3万キンの援助をいただきました。そこに、Sランクの依頼を5件クリアしましたので、25万キン。Aランク依頼10件で20万キン。それに――」


ほら、十分じゃないか。4人のパーティーで月収60万オーバーなんて、さすがは勇者パーティーだ。このビンボー王国において、下手したら国王以上に稼いでいるじゃないか。一人あたり手取り15万キンだぞ?


「――ということで、支出の中で最も高額だったのが食費。エンゲル係数が非常に高いです。その中でも、マネールの食費は群を抜いています」

「お前の言葉を借りるようで悪い、マネール。食事はパワーの源だ。だからこそ、だ。一人だけ気にせず肉を注文するようなやつと、これ以上一緒に過ごすことはできない。抜けてくれ。これが契約書だ。パーティーを抜ける時の規約はここに書いてある。今回は自己都合ではないからな。退職金は3か月分だ。装備もそのままやる。だから、ここに契約破棄のサインをしてくれ。頼む」


「僕が抜けたら今後魔法使いはどうするのさ?」

「ああ、それに関してはもうめどがついている」

「マジで!?」

「国王の義理の娘のヤミ・マホ。マネールのような器用な魔法は使えないが、背に腹は代えられない…」


そこまで言われて、選択肢はなかった。

「分かった、サインをするよ」

「ありがとう…。最後の肉、旨かったか?」


あと3切れ。見事に冷え切っていた。

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