第6話 作らないでください

俺は、自分の妻ルチアの行動に悩んでいた。


正社員だが、俺の給料はそんなに多くない。


夫婦だけなら節約すればそれなりに生活していける。


でも、子供が産まれたら、俺の給料だけでは、難しいだろう。


だから、ルチアと結婚する時に、仕事を続けて欲しいと言った。


ルチアは、不器用だから家事に慣れるまでは家にいたいと仕事をあっさり辞めてしまった。


まだ、子供がいない。なんとかなるだろう。ルチアが仕事をするつもりになってから、金銭的な余裕ができてから、子供を考えようと思っていた。


ルチアは、自分で言うように不器用な所があった。でもそれなりに料理を作り、毎日掃除をするルチアが最初は微笑ましいし、一所懸命な所が好ましかった。


結婚して、1週間後に、その思いは消え去った。


ルチアには1か月の食費と雑費だと言い、10万円を渡していた。家賃や光熱費、通信費などを俺の給料から引くと十数万円しか残らない。俺が一人暮らしの時は、1か月5万円の食費で生活をしていた。10万円あれば十分二人分の食費になるだろうと思っていた。


ルチアは1週間で10万円が無くなったから、追加の生活費が欲しいと言ってきた。


驚きルチアに確認すると、ほとんどが食費に消えていた。国産肉、ブランド米、有機野菜、ドリンク剤、高級アイス。一つ一つ確認するが、健康の為にこの食材で無ければいけないからとルチアが折れる気配がない。


しぶしぶ、貯金を崩し10万円を渡す。これ以上は出せないからとルチアを何度も説得した。


ルチアに任せていたら、出費が多くなりすぎるからと、休日は自分で買物に行き料理をした。俺が作った料理は安い食材でも美味しそうに食べるのに、自分で作る時は、材料のこだわりを譲らない。


毎日ルチアが作る食事は、豪華だがその分材料費が高額だ。食材の為に、また貯金を崩さなければいけないと思うとルチアの作った食事が喉を通らなくなった。


ルチアには、仕事をするように促した。ルチアが作るより、弁当や冷凍食品、安い外食で食事を済ませた方が、かなりの節約になる。俺が作ってもいい。


だけど、いくら言っても、慣れていないから、食事を作りたいからと仕事を探す気配がない。俺の給料明細を見せたし、徐々に減る貯金通帳も見せた。だけど、幾ら高級食材を買わないでください。作らないでください。と言っても食事の方が大事だからと聞き入れてくれない。


俺がいなければ、高級食材で料理を作らないのではと思い、仕事が終わった後、残業だと言い帰らないようにした。ファミレス等のチェーン店で財布と相談しながら、食事をとる。一口が数百円以上するルチアの高級食材を使った料理は砂のような味がしたのに、チェーン店の味はとても安心できる味で美味しかった。


だけど、ルチアは俺がいなくても、友人を家に招き自慢の料理をふるまう。ルチアの好きな高級アイスの差し入れがあったからと言われたが納得できなかった。そんな金はどこにもない。1年の結婚生活で、それまでに貯めていた貯金は100万円以上減っていた。


もう限界だった。


このままルチアと結婚生活を継続する事はできない。


だから、俺は言った。


「離婚してください」


















END「待ってください」

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待ってください 仲 懐苛 (nakanaka) @nakananaka

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