第7話 不幸キャラ ラキシス
お嬢様と別れた後、ビエラとその師匠であるサスキ様のもとに向かった。
2人との出会いは俺にとっては幸運と呼べるものだ。
俺は不幸の星のもとに生まれたラキシス。双子として生まれ捨てられてしまう冒険ファンタージーゲームのメインキャストの一人。
じゃあなぜ、不幸設定のラキシスに幸運なことが起きたのか。
俺が前世を思い出し奴隷商人から逃げ出したからだ。
吐き気がするがもしも、前世を思い出していなければ、ゲーム開始の時まで性奴隷のまま何年も悲惨な生活を送っていただろう。
奴隷解放後にチートで無双な勇者になるが、彼にはハッピーエンドは用意されていない。その不遇な運命が人気のキャラだからだ。
噂では最後はやっぱり悲惨な最期を迎え、ラキシスロスが起こったとか。
不幸キャラなんて糞食らえだ。
「なぜ、魔力の大きい俺の方を捨てたんだろうな」
ひがみでもなんでもなく、ただ純粋に疑問を口にしてみた。この世界で魔力は絶対の権力だ。地位が高くなればなるほど、魔力量が多いという事は有利な事なのに。もしかして片割れはチートな俺よりさらに魔力量が多い設定なんだろうか。
いまいちその理由が思い出せない。
「あ~、なんでもっとちゃんと設定読み込んでなかったんだろ。魔王討伐して、聖女に恋するって設定なのは覚えてるんだけどな」
それ以上は記憶にない。
まあ、今さら言ってもしかたない。
*
それからサスキ様の所で5年修行し、俺が12歳になったころ。
予想以上にチートになれた気がするし、無事に魔法陣も自分で解除できた。
さて、この先の展望はどうするかなぁ。
ボーっと散りゆく桜を見ながら考え込んでいると、思わぬ人物と再会した。
以前あった時と違い、髪の色も瞳の色も違っていて分からないようだったが、どうやら俺と同じで師匠に魔法陣を消してもらいに来たらしいお嬢様が桜のトンネルを歩いてきた。
これってゲームならフラグ回収なんだろうけど、実際に体験すると運命だな。
7歳の時は生意気で悪役っぽかったのに、今はどう見てもヒロインだろ。
たしか、ヒロインとはろくなエンドを迎えることはできなかったはず。何せ俺は不幸設定。
ここは迷わず距離を置くだな。
今の俺じゃあ、自分のシナリオを変えるので精一杯。これからどう生きるかじっくり考えて、設定をひっくり返さないと。
俺はすっかり毒気の抜けたお嬢様にちょっと心がくすぐられるのを自覚しながら、遠くから見守ることにした。
手を出したら犯罪。
かつての自分の姿を思い描いて、12歳の自分の気持ちにふたをした。
さらに3年。15歳で運命のいたずらで再び少女が成長して俺の前に現れるまで。
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