第72話:酔っ払いs
「ジャッキーさんって、本当に神様なんですかー?」
「にゃにおー! 私は、由緒正しい血筋の神様です!」
にゃにおーって……
あんたは、猫じゃなくて狼だろう。
やばいなー……
ジャッキーさんもだけど、俺も酔いが回ってきてる自覚はある。
まだ、ギリ心地よい段階だけど。
ジャッキーさんに勧められるがままに、吞んでしまった。
状態異常無効は流石に無粋なので、切っているけど。
ほろ酔いを通り越してそう。
いつの間にかビールがワインになって、それが焼酎になって……
いまは熱燗を呑まされているところ。
「わたしの祖父も曾祖父も凄い神様なんですよ!」
といっても目の前の狼ほど、へべれけではないけど。
神様って、案外酒に弱いのかもしれない。
「そうそう、北欧神話! ちょっと、興味あったりするんですよね」
「ほう! ほうほうほう! それはぜひ、聞いてください! こう見えても血縁者なのでそれなりに裏話は知ってますよ!」
いや、表向きの話なんだけど。
神様の裏事情とかは、特に興味ないというか。
それはそれで、興味あるというか。
今じゃないというか。
「北欧神話の神様って、意外と下衆い人多いですけどね」
「……いきなり、批判から入りますか? 身内を前にして」
思ったことを伝えたままなのに。
まあ、いいや。
色々と謎が多いというか、不思議な立ち位置の曾祖父の話でも振っとくか。
良い酒の肴になりそうだし。
「ロキさんって、どういう人なんですか?」
「人じゃないですけどね……うーん、陽キャ? いや、チャラ男ですかね? まあ、リア充ではありますけど」
この人も、大概酷いこと言うな。
まあ、なんとなくイメージ湧かなくもないけど。
奥さん3人いるし。
いや、1人は旦那さんか?
馬だけど。
やってることはスケールでかいけど、ノリは軽いイメージは確かにある。
口八丁でグングニル作ってみました的な。
それから他にも、色々と身内の話をしてくれた。
親族会では、蛇や6本足の馬も来るから会場が面倒と言ってたけど。
サイズが調整できるのが、せめてもの救いとのこと。
スレイプニルさんの血縁も、ポニーのサイズにまで小さくなれるとか。
ヨルムンガルドさんの血縁は、小さくなっても大蛇らしい。
ヘルさんとこは、割と色々と腐ってるって言ってたかな?
ナリさんとヴァーリさんは、ロキさんがあんなんだから根暗だとか……
それで、知名度無さ過ぎて、いっつも誰お前ってなってるらしい。
その子供達も、やや肩身が狭いらしい。
キラキラ感が無いって。
酔った勢いで、凄いこと言ってたな。
ペラペラしゃべっているけど、大丈夫かな?
「ヘル大叔母さんは、日本のイザナミ様と仲良くってですね! 婦女子連合なるものを作ってましたよ! で、腐ってないのにスキュラおばさんが無理矢理参加させられてて」
いや腐女子連合じゃなくて、婦女子連合なら参加資格あるんじゃないですか?
それにしても、スキュラおばさんって……
「クッキー作りが得意だったりする?」
「よく分かりましたね! 幼い頃にハロウィンの時に何度かお邪魔したことがありまして」
そうなのか。
イメージが全然湧かない。
スキュラ……下半身犬の人。
だからかな?
「あはは……分かりますよ、言いたいこと。ギリシャ組の中では一番私を可愛がってくれましたし」
そういうことらしい。
てか、巨人同士の間になんで狼と蛇が産まれたんだろう?
というか、もしかしなくても托卵……
「酷いこと考えますね! ちゃんと曾祖父の血統です!」
そうですか。
村のあちこちで、酔っ払い共がはしゃいでいるが。
一部、怪しい集団も。
キノコマルを中心とした集団。
車座になって、真ん中にお香を焚いているけど。
絶対にあれだよね?
ハッピーになるやつだよね?
「違います。魔物避けと、酔い軽減のあるお香です。皆さんが酔ってる時に、襲撃受けたらどうするんですか?」
お……おおう。
真面目か。
逆に酔ってるんじゃないかなって思うのは、流石に考えすぎだろうか?
あと、キノコマル以外、全員が目が逝ってるけど?
「まあ、私たちも魔物ですからね」
……じゃあ、駄目じゃん。
とは、言えない雰囲気。
キリっとした表情で、真面目そのもの。
担がれてる?
「心外です! いつも、ふざけてばかりだと思わないでください!」
なんだろう。
正論だし、やってることは正しいのに。
こいつにそれを言われるのは腹が立つ。
やっぱり、呑みすぎたかな?
なんか、話しかけにくい雰囲気だったので、ジャッキーさんの方に戻る。
あっ、女性のゴブリンに囲まれてご満悦そう。
あの輪には、入りづらいな。
ちょっと、風に当たってくるか。
そんなことを思っていたら、ジソチが声を掛けてきたので、これ幸いにとキノコマルのことを聞く。
「ああ、あれですか? また、材木置き場でハッピーマッシュ量産して、ゴブサクさんとゴブオさんがブチ切れて在庫も含めて全部焼き払ってしまって」
そうか……なんとなく感じたけど。
それで哀愁漂う背中になってたのか。
拗ねてるだけだと分かって、一安心。
また、一時したらおバカなキノコマルに戻るだろう。
うわぁ、悪い顔して魔物避けのお香、おかわりしてる。
完全に闇落ちした顔だ。
もう拗ねてるというより、やさぐれてるな。
グレてドラッグが絶てるなら、いいことだと思うが。
あっ……
「痛いっす!」
なんだ……と?
ゴブオが背後から忍び寄って、キノコマルの頭にげんこつを落としていた。
そして、それが当たっていたことにびっくり。
「ゴブオさんは、必中スキルの一つ【親方のげんこつ】持ちですから」
そうなの?
そんなスキルあったのか?
俺も欲しいんだけど?
「ユニークスキルのなかでも、最上級にレアなスキルみたいですよ? アスマ先生が長い人生の中で必中スキルを見たのは、ゴブオで2人目だと言ってましたし」
いや、長い人生というか。
長すぎるうえに、人ですらないというか。
とりあえず、皆が飲みすぎなのは分かったけど。
明日は酷いことになってそうだな。
やっぱり、状態異常を多少は軽減させておこう。
うーん、ジャッキーさんがまたトッロトロになってるけど。
回収した方がいいかな?
てか、もう5時過ぎたけど会社に連絡とか?
「今日は半休とって明日も有給にしたので、オールナイトでいきますよー!」
いや、そんな自由なの?
ホワイトだなー……
重役だからかな?
それとも、俺以外はそうなのかな?
「うちは育休も取れますし、超絶ホワイトですよ?」
絶賛、俺がブラック勤務に近いのですが?
まあ、業務内容が仕事っぽくないから、別にきつくはないですけど。
「ふふ……時間の流れが違うので、別にあっちの世界の個人的都合は気にしなくてもいいですよー」
いや、でもテレビの放送内容とか……
「タイムシフトで転移陣に戻るときには、転移した時間軸に近い時間に戻りますよ!」
そういうものなのか。
まあ、神の成せる業だな。
それにしても……
「俺って、なんか物語の主人公っぽいですよね? 転生転移系の」
「どっちかっていったら、ラスボス系じゃないですか?」
いや、なんで?
「戦力とステータスが凶悪過ぎて。骸骨やら魔王やら、交友関係がブラック過ぎて笑えます」
そう言って爆笑してる狼を見ていると、考えるのがあほらしくなってくる。
交友関係がブラックって、そういう意味なのだろうか?
そういった点では、黒い大きな狼と懇意にしているこの関係が、黒い交際の筆頭だと思う。
「上手い事いいますねー!」
まあ、あほなことを考えた。
ただの社畜が、物語の主人公だとか。
笑えない。
よーし、今夜はとことん飲むぞ!
敢えて口に出して宣言したら、周りから歓声があがる。
「これは、ワンチャンあるかも!」
「ロードの子種!」
あっ、やっぱり状態異常解除して、一度リセットしておこう。
なんか、背筋がゾワゾワしたし。
「無粋ですねー」
いや、貴方が一番気を付けた方がいいと思うんですけど。
既成事実作られて、異世界婚とか……曾祖父さんのこと笑えなくなるけど?
「じゃんじゃん飲みましょー! そうだ、会社の若い子も仕事終わるんで呼んでもいいですか?」
うーん……ややこしい人じゃなければ。
「人じゃないですけどね」
うん、ぜひ先に
いきなり、飲み会に呼び出すのはお互い迷惑ですよ!
「一緒にお酒飲んだら、
なぜ、中国語?
あとそれ、アルハラだから。
「あははは、それ言ったら私が日本語使ってる自体がおかしいでしょう」
笑うところ、そこ?
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