第3話:ゴブリン運用してみた

 ゴブリンのステータスは確かに分かった。

 なんていうか、目の前にインターフェイスが浮かぶというか。

 近未来の空間映像……近未来かどうかは分からないけど。

 何年も前からできそうでできないというか、テーブルにキーボードを映すとか壁に映して空中で操作とかはあるけど。

 いわゆる、あれの完成版だな。


 そして、ステータスがいじれるという意味も。

 レベルがバラバラだが、レベルの高さに応じてボーナスポイントがあるらしい。

 ただ、これはこいつらじゃ自分で振り分けられない仕様と。

 なるほど、個体名をソートする機能もあると。

 ウェイトという項目があるので、押してみる。

 周囲が一気に静かになった。

 あー……作業に集中するモードか。

 このインターフェースの操作以外はできない感じと。

 レベルが高いものでも8か……ポイントはぼちぼち。

 なんとなくざっくりと理解したので、ウェイトモードを解除する。


 それにしても、くせーな。


「臭い」

「申し訳ありません」


 俺の言葉に、近くにいたゴブリンが小さくなって頭を下げる。

 とりあえず、俺にもボーナスポイントがいっぱいあったから振り分ける。

 生活魔法の中に洗浄魔法と、消臭魔法、除菌魔法を見つけた。

 即行で取ったわ。

 そして乱発しまくったわ。

 住環境も気に入らない。

 土属性魔法に植物関連やら土操作やらあったから、それも取った。

 とりあえず、このあばら家とすら呼べないぼろい建物が嫌すぎる。

 隙間から虫が出入りしてるのも、普通に床に虫がいるのも。

 

 外に出て、土魔法で壁と床と天井を作った。

 窓のところは、とりあえずガラスが無いからそのまま。

 ドアもないから、出入り口もどうにもできない。

 虫の侵入を防ぐ手段が……

 生活魔法にあった、防虫魔法で家を覆う。

 まあ、多少はマシになった。

 新築の家だけど、さしてワクワクすることもなく室内に。

 暗い……


 光属性魔法のライトの魔法をとる。

 ポイントを確認。

 まだまだ、余裕でいけるな。


 俺の行動をゴブリンどもが汚い面で、ビクビクしながら見てきたのがちょっとイラっとした。

 

「ガアアアア!」


 だから両手をあげて、意味もなく威嚇した。

 すごい勢いで逃げてって、ウケる。

 つまづいたり、転んではいずって逃げたりコミカルだ。

 ちょっと溜飲が下がった。

 うん……ストレスだな。

 ただの、八つ当たり。

 イライラが初日から、こんなにたまるとは。

 帰れたら、専務の頭一回くらい叩いても怒られないよね?

 いや、基本は優しいおじいちゃんなんだけど。

 この仕打ちは許せん。


***

「うーん、よく寝たのに……夢から覚めない」


 目を開けると無機質な天井。

 げんなりしつつ、背伸びをして起き上がる。

 

「うへあっ!」


 外に出ようとしたら、入り口から緑色の気持ち悪い猿共が覗き込んでた。

 思わず変な声が出た。


「ガアアアアア!」


 とりあえず恥ずかしかったので両手をあげて、ゴブリン共を威嚇して散らす。

 ちょっと楽しくなってきた。


 うん、ゴブリンの集落に出向中だった。 

 とりあえず、こいつらは俺に対してメチャクチャビビってることだけは分かる。

 調子に乗りたくなる程度には。


 見た目があれすぎるので、今日こそはどうにかしようと考える。

 全員に土魔法で仮面でも作って被らせるか?

 昨日に引き続き、全員に洗浄魔法を掛ける。

 一日で結構臭うんだなこいつら。

 俺もか?

 自分の臭いをかいでみて、臭わなかったのでほっと胸をなでおろす。

 

「とりあえず、道を綺麗にしろ! 糞尿は決められた場所でしろ! あと、毎日水浴びしろ! 家は綺麗にしろ!」

「はいいい!」


 ゴブリンどもを全員集めて、それだけ命令する。

 いや、命令するというか、指示を仰いできたから適当に。

 俺の言葉になんでも従ってくれるのは、良いことだと思いたい。

 面倒だが。


 目の前のゴブリンを追い払ったので、落ち着いて自分の仕事を。

 名前順にステータスを確認して、ポイントを割り振り。


 うーん……人が来るまでにある程度、強くした方が良いのだろうが。

 と思いつつ、ボーナスポイントを器量と知性と力を6対3対1で割り振る。

 見た目がよくなったら、多少はマシになるだろう。

 

「とりあえず、外に出て狩りをしてレベル上げてこいや!」

「ひいいい!」


 ポイント割り振りが終わった後で、レベル上げのために全員追い出す。

 ポイントが無いと、俺のできることもない。


 子供ゴブリンも容赦なく追い出す……

 大丈夫かな?

 これで、数減ったら怒られたりするのかな?


 杞憂だった。

 大人ゴブリンが手伝ったりして、全員無事に帰ってきた。


「すごい! ホーンボアを狩れました」

「ロードの加護を得て、力が強くなった気がします」

「それに、なんというか頭がすっきりとしているというか。猪の動きを見て先回りする方法や、うまく連携を取る方法が思いつくと言いますか」

「とにかく、こんなに大量に獲物が取れたのは初めてです」


 そうか、それは良かったな。

 レベルが結構おいしことになってた。

 というか、ステータスをいじって強くなったってことか。

 レベルが上がったからか基礎ステータスも上がってるから、別にポイントの割り振りは適当でもいいかなあ。


***

「ロード、これを食べてください」

「あっ、おれ生肉食べないから」


 ゴブリン共が、色々と献上品を持ってきてくれるが。

 正直、得体のしれない肉を差し出されても。

 この辺りは、要相談だな。

 木の実とかもおそるおそる食べてるけど、肉はなー。

 火魔法を取ったから、焼くことはできるけど。

 うーん、寄生虫問題とか……ジビエといえば聞こえがいいけど、野生の動物と言えばその問題が大きい。

 漫画や物語のように、簡単にはいかない。

 焼けばいいだけだけど。


「ジャッキーさーん!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る