「俺の死にざま」 希望無きこの世界で…

石のやっさん

第1話 3つの希望

俺の名前はリヒト…この世界で英雄をしている。


言ってはなんだが、背も高く金髪にブルーアイのなかなかの美形だ。


カルバン帝国から正式に認定されたこの世界で唯一の英雄で、俺の頼れる相棒 魔剣レイブンの前にはいかなる魔族も滅びる。


今、この世界は魔族と人類とで戦争状態で人類側が劣勢状態。


だが、そんな中でも『3つの希望』と呼ばれている存在が居る。


まずはこの俺『黒き英雄リヒト』


帝国の英雄、人類の救世主と言われている。



聖教国最高の回復魔法の使い手『白き聖女ミルカ』

白銀の綺麗なロングの髪に白い肌、切れ長の目をした女神の様と呼ばれる。


聖女の再来と言われる最高のヒーラーだ。



王国最高の魔法使い『青き賢者 ジャミル』


黒髪に赤い目、背は高く顔色は何時も青い…だが


賢者のように千の魔法を使う最強の魔法使い。


俺達3人こそが人類最強の戦士だ。


この世界には勇者も聖女も賢者もまだ生まれていない。


ミルカもジャミルもその強さから、聖女、賢者と呼ばれるが本当のジョブはヒーラーと魔術師だ。


『勇者』が生まれて来ないこの世界で…最強のメンバーだ。


◆◆◆


「英雄リヒト、この度の魔族幹部ブルドの討伐見事である、よって第一勲王花勲章を与える」


「はっ謹んで頂きます」


「流石はリヒト殿だ、これで13個目の勲章だ」


「一生に一度貰えるかどうかの勲章をこうも連続でとるとは…」


「流石は人類の救世主…英雄リヒト様だ」


いつもの光景だ。


前線に出て戦っている俺には当たり前の事だ。


「相も変わらず凄いわね」


「なんだミルカか」


「なんかじゃ無いわよ、余り無理しないで」


「そうは言うが、俺が此処で踏ん張らないと世界は大変な事になるんだ…やるしかないだろう?」


「まったく、貴方は、まぁ言ってもきかないんだから仕方ないわ」


「しかし、本当に凄いな君は…君がとんでもない活躍をするから、僕がどんな功績をたてても薄れてしまうよ」


俺達は偶に共闘したり、単独で戦ったり、つかず離れずの距離を保っている。


本当はパーティを組みたいが、国の事情で、そう言う訳にいかない。


魔族と戦うのを優先的にしなければならない筈なのに国同士が利権争いで一つに纏まらない…馬鹿な話だ。


◆◆◆


俺には、正確には俺達には隠している事が1つある。


それは俺とミルカが付き合っているという事だ。


英雄と聖女、普通に考えたらお似合いだろう?


だが、俺が帝国、ミルカが聖教国と国が違う。


恐らく俺達が結婚という話になれば、どちらの国も所有権を主張して揉める事になる。


だから、俺達が付き合っている事は秘密だ。


二人以外でこの事を知っているのはジャミルだけだ。


いつもの様に変装をしてミルカを待っていたが、待ち合わせ場所にミルカが来なかった。


時間に正確なミルカが遅れるなんて珍しいな…そう思い待っていると子供冒険者が手紙を持ってきた。


「俺にか?」


「うん、聖女様から預かってきたんだ」


「ありがとうな」



俺はお駄賃として銅貨1枚を渡して手紙を受け取った。


手紙には…


『魔族に襲われた村があり、ジャミルと共に討伐にいってくる』


そう書かれていた。


可笑しい。


魔族が村を襲っているのなら…何故俺を呼ばない。


今日はミルカと会う日なのだから俺の手が空いている事は解る筈だ。


その状況で俺を呼ばないのは可笑しい。


だが…そう言う事か。


魔族は少人数で、自分達二人で倒せる…そう考えたのか?


それも可笑しい。


少人数の魔族で簡単に倒せるなら、ジャミルの性格なら1人で行くはずだ。


手柄が欲しいジャミルなら、ミルカを誘う筈がない。


『2人』


これが俺には凄く引っかかった。


だが、この世界最高と言われる人間が2人も居るんだ。


魔族の幹部だろうと簡単に倒すだろう。



そう思った。


「仕方が無い、今日のデートは中止だな…宿に帰って寝るか」


そう言えば今日一日空ける為にかなり無理していたな。


此処暫く休みなく戦い続けていた。


よし…今日は死ぬ程眠るぞ。


そう思い、俺は宿に帰って行った。


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