39.買い物

「帰ったぞ」

「クロト。遅かった」

「ああ、悪い。緊急事態が思ったより緊急だったんだ。セラ、全員集めてくれ。とりあえず今回のことを話す」

「ん、わかった」


とりあえずシーアたちに悪魔界のことを伝えた。


「私、そこ行きたくない」

「カイ君が虫大丈夫で良かったね」

「…悪魔界、本当にあったんだ」

「「倒してみたい!」」


うん、まあいつも通りの反応だ。

とりあえず、当分は悪魔界には行かないと麻紀と麻衣には伝えた。

あ、ついでにクラスメイトのことも伝えておこう。


「そういえば麻紀と麻衣と一緒に召喚された奴らだけど、相当混乱してるみたいだぞ」

「何かしら指示しないと動くことができない人たちですからね」

「まあ、もう関係ないからいいでしょ」


…なんか麻紀と麻衣が少し大人びて見える。普段はこんな感じなのかもしれないな。

まあ、それはともかくとして…


「クラスメイトに会いたいとかは?」

「「ない」」

「お、おう。そんな食い気味に言わなくても…」

「さっき麻衣ちゃんが言ってた通りあの人たちはもう関係ないですからね」

「そ。ほっとくほっとく」

「そうか」


まあ、本人が言っているのだから大丈夫だろう。


「さて、何か食いに行くか」

「肉系!」

「シーア、昨日食べたばかり」

「そうだよ。何か別の物にしようよ」

「「魚!」」

「何でもいいから早く決めてくれ」


麻紀と麻衣のクラスメイトは、優先順位が飯より低いらしい。

可哀そうに。


翌日


「カイ君、今日何か予定ある?」

「いや、ない」

「ホント!?じゃあ買い物付き合って」

「…俺がついて行っても荷物持ちくらいにしかならないぞ?」

「いや、そんなことないでしょ。ちゃんと役割はあるから。あ、でも荷物持ちにはなってもらうよ?」

「へいへい」


俺が何の役にたつのだろうか。よくわからんが、まあいいか。

ちなみに南以外はダンジョンに潜るらしい。俺も行こうかと思ったのだが、シュルトに

「お前はダメだ。迷宮を破壊しかねない」

と、禁止されてしまった。

まあ、絶対に行かなければならないわけではないからいいだろう。


南視点


カイ君と2人で買い物に行くことが決定した。これなら苦労した甲斐がある。

数日前からカイ君との買い物にいくための作戦を決行していたのだ。探索者ギルドに行って資料を使って、迷宮で出る珍しい魔道具などを調べていたのだ。そして数日かけてシーアたちにその魔道具などの情報をさりげなく流して、迷宮に興味が向くようにした。


そして今日。私の努力が実ったのだ!

とはいってもカイ君と2人で買い物に行きたいだけではない。…いや、まあ大半はそうだけど。

前の世界…地球で無理やりカイ君を付き合わせた時だ。カイ君に私に似合いそうな服を適当に見繕ってと言ってみたのだ。

するとカイ君は2分ちょっとで戻ってきた。本当に適当に選んだんだなと思ったらやたらセンスが良かった。つい他の女デートでもしたことがあるのかと聞いてしまった。

そしたら…


「僕に南と麻紀と麻衣以外の女子の知り合いがいると思う?男子の知り合いすらまともにいないんだよ」


と、なんとも悲しい答えが返ってきた。

あ…少し前からカイ君に感じてた違和感は口調か。性格が変わっていなかったせいで違和感以上を感じなかった。多分だけど麻紀ちゃんと麻衣ちゃんも同じだと思う。

まあカイ君はカイ君だし口調なんてどうでもいいか。


「南、準備できたぞ」

「じゃあ行こうか」

「ああ」


とりあえず雑談しながら、その辺の露店で必要な物を買いあさる。


「それにしても《空間魔法》って本当に便利だね」

「ああ。この《収納》だけでも、色々応用できるからな」

「へー。例えばどうやって?」

「そうだな…あ、ちょうどいいや」


カイ君がそういうと視界の端で1人の男が何かにぶつかったかのように倒れた。


「・・・なんか可哀そう」

「なんか悪い顔しながらこっちによって来てたから別にいいだろ。まあ、普段は《グリーンウォール》の応用を使って転ばせるんだけどな」


これに関しても本当にすごいと思う。あの魔力量であの威力に調整するのは相当難しいと思う。少なくとも私にはできない。

…それにしても普段、ね。

私はそれなりに見た目が整っているのは自覚しているし、シーアたちも滅茶苦茶美人だ。

その割には法がある地球よりも寄ってこないと思っていたのだ。それも、カイ君が阻止していたというなら頷ける。

まあ、その理由も私たちに男が近ずくのが嫌というものなら良かったのだが、恐らく対応がめんどくさいからなのだろう。

…まあ、カイ君だししょうがないかな。


その後は普通に買い物をした。

ちなみにカイ君のセンスは相変わらず高かった。しかも基本一人暮らしだったから、カイ君料理もできるんだよね…。私よりも女子力高い気がする。

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