02.転移

黒野海斗。クラスでの呼び名は「根暗ヤンキー」。根っこの部分はオタク(軽度ではあるが)、本人はクラスのオタクと仲良くなりたいと思っている。しかし呼び名にヤンキーとつくほど目つきが悪いせいでオタクにも避けられてしまう悲しいボッチである。

さて、海斗はいつもの通り本を読んでいた。

すると突然教室が光に包まれる。

普通は混乱するところだが、一部の者には何度も夢見た展開のため興奮している。海斗もその1人だ。


教室が光に包まれて約10秒。


真っ白で終わりが見えない空間。まさに神の部屋というべき場所に出た。

ただ、クラスメイトでラノベのような小説を読んでいない不良や勉強バカは不安で大騒ぎ。

オタクは興奮で大騒ぎ。

つまりまあ・・・うるさい。

うるさい中、突然


『突然で申し訳ありません。私はあなた方の言うところの神です」


頭の中に声が流れ込んでくる。ただ、事情を知っていそうな口ぶりだったため余計にうるさくなった。


『あなた方にはこれから異世界に行っていただきます。』


そんなうるさい中でも神は話し続ける。


『その異世界の名前はグリムガル。あなた方召喚したのはルーナ王国。ルーナ王国はグリムガルで2番目に大きい国です。そこに勇者や聖女、戦士などとして召喚されます。世界や国の内情などは後ほど。さて、何か質問はありますか?』


神は何事もなかったかのようにしているが、説明中も今もクラスメイトはずっと叫んでいる。

しかし


『ふむ。質問の類はないようですね。』


すべて聞き取ったようである。聖徳太子の上位互換・・・


『それではあなた方の適正職業を調べたいと思います。』


神がそういうと部屋が再び光に包まれた。目を開けて見えたものは向かい合った状態で置かれた机と椅子。そして片方の席に座った人型の光。神かな?


『ええ。そうです。どうぞお座りください』


心読まれた、流石神。などと考えながら席に座る。


『では適正職業調べを始めます』

「ゆ、勇者がいいです。」


当然勇者と答える。


『あ~。勇者ですか。申し訳ありませんがあなたでは勇者になれません。』

「そうですよね・・・。」


まあ陰キャにはむりだよな。それなら・・・


「じゃあ戦士で・・・」


戦士でも活躍はできるだろうという魂胆だったのだが・・・


『すみません、言葉がたりませんでしたね。あなたは勇者側の人間にはなれないということです。』

「・・え?つまりどういう・・・?」

『端的に言うと魔族側にしかなれません。』

「そ、そんな。どうにかならないんですか?」

『なりません。残念ですがあなたに選択肢はありません。それでは、頑張ってください』

「なっ・・・!」


本日3度目のフラッシュである。

目を開けてあったのはドアが一つある寂れた部屋とポツンと置かれた水晶だけ。


「なんだ?これを取れってことか?」


持ってすぐ後悔した。とんでもない頭痛である。


「なっ・・んだ?こ・・れ」


痛みに堪えること数分・・・

結論から言うと水晶はこの世界、グリムガルの大まかな情報だった。


その情報をまとめると・・・

一般的に知られているものが

・グリムガルには4つの国がありそれぞれ<ルーナ王国><ソルガール王国><ウィーン帝国><モルテリア共和国>

・人類側は魔王を倒すために武力を蓄え、勇者を支援する。

・魔族は基本的に殺害対象。

・モルテリアは共和国で色々な種族がいるため。あまり魔族との対立していない。

・勇者と魔王は不死ではないが不老。

etc・・・

一部の者しか知らない情報

・魔王は魔族をまとめる者ではなく一定以上の実力をもつ者に与えられる称号。

・魔王は数人おり人類側は一番被害を出した者を公式に魔王と認め討伐する。

・魔王を5体以上倒したときに人類側の転移者は自動送還される。

etc・・・


あれれ?僕は帰れないのかな?・・まあ今考えても分からないから後回しだな。

「情報は手に入った。さて・・・。」


現時点ではどうしようにもないので進むしかない。ドアをくぐるとそこは、神の部屋とは真逆の黒い部屋。そこに居たのは・・・


『珍しいね~。ここに転移者が来るのは~。』


神とは真逆のやる気がない雰囲気の黒い人だった。


「えっと、珍しいというのは?」

『いや、だって転移者は大抵勇者側に行っちゃうからね~』


やっぱりそうなんだ・・・


『とりあえずこの後の説明をするね~』

「あっ、はい」

『この後さっきよりも細かい適正職業を調べる。そして、適正職業の担当の者と面会して職業を決めてもらう。ってところだね~。バイバイ~。』

「え?」


またフラッシュ。質問もさせてもらえなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る