第2話 小学5年生女子

 私が学校に行くと、机の中に黄色いノートが入っていた。いつから入っていたのかはわからない。私のものじゃなかった。開いてみると、私あてに手紙のような文章が書いてある。


『すいちゃん、これから私と交換日記始めようよ。これから色んなこと話そうね。すいちゃんが好きなテレビって何?』


 私はうれしくなって返事を書いた。


『私が好きなテレビは”世界の果てまでイッテQ”と”モニタリング”。どっちも録画して見てるよ。好きなテレビは何?それに、名前教えて』


『私は森の妖精。好きな名前つけていいよ。私の好きなテレビは”有吉のかべ”。好きな食べ物は何?』


『じゃあ、名前はモーリーにするね。”有吉のかべ”私も見てるよ♡好きな食べ物は、フライドポテト。モーリーちゃんは何が好きかな?』


『私の好きな食べ物は、女の子の脳みそ。じゃあ、すいちゃんの好きな芸能人を教えて』


『女の子の脳みそはおいしくないよ。男の子の方がおいしいってパパも言ってたよ☆好きな芸能人は、あんまり有名じゃないかもしれないけど、メイヘムだよ。ノルウェーのバンドで、メンバー同士が殺し合ったり、くそやばいバンドだよ。モーリーちゃんは誰が好き?』


『メイヘム聞いてみるよ。私が好きなのは、AKBかな。押しは、岡田奈々ちゃん。 好きな男の子のタイプは?』

『引きこもりで、家で爆弾作ってるような子。モーリーちゃんはどんな子が好き?』


***


 クラスの男子で最近、学校に来なくなった子がいた。

 交換日記もその時に途絶えてしまった。


 すいちゃんはその子の顔も名前も思い出せない。

 でも、教室の後ろには習字が貼ってあって、谷川岳君という空白のスペースがある。その子の机もちゃんとある。


 きっとこの子だったんだろうと、翠ちゃんは思っている。





 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る