第10話 コラボパフェの誘惑
見慣れた看板、見慣れた店頭。
少し違うのは『断罪の黒騎士コラボカフェ実施中!』と書かれた旗を大々的に掲げている事だろうか。
一番混むであろうお昼時の時間帯を過ぎた事もあって、ファミレスの店内は比較的空いているように見える。
少し大きめの扉を開けるとカランカランという鈴の音と共に、店員さんがこちらに寄ってきた。
「いらっしゃいませ。何名様でいらっしゃいますか?」
「2名です」
「かしこまりました。席にご案内します。こちらへどうぞ」
店内の奥側に位置するテーブルに案内された俺たちは荷物を置いて、お互いが向き合うように座り込んだ。
「やっと......やっとだな明人。数多の試練を乗り越え、生きてこの地に辿り着くことが出来た......!」
「あぁ、5限目の古典は特に強敵だった。催眠術を使ってきて、危うく寝ちまうとこだったな」
「4限の数学の方が強敵であったぞ?我を混乱させる術式で精神攻撃をしてきたからな」
放課後の自由な時間というのは実に心が踊るものだ。
束縛を一気に解かれたような解放感がある。
朝と今のどちらが元気かと言われれば、即答で今と答えるだろう。
そして、下らない話で盛り上がってしまう程俺たちはこの瞬間を楽しみにしていたのだ。
茶番は程ほどにして、俺たちはテーブルに立て掛けられたメニューを手に取る。
俺はその中で一際存在感を放つ商品を指差した。
「断罪の剣パフェ税込980円これだな」
「うむ。早く注文するぞ明人!」
「勿論だ。ドリンクバーも付けていいか?」
「うむ。よろしく頼むぞ!」
俺は備え付けの呼び出しベルを押し、店員さんを呼び出す。
「お待たせ致しました。ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい、断罪の剣パフェを1つと、ドリンクバーを2つお願いします」
「ありがとうございます。ご注文を繰り返します。断罪の剣パフェを1つ、ドリンクバーを2つでよろしいでしょうか?」
他に注文がないか確認する為、目の前に座る彼女の方を向いた。
すると、まだ注文している最中なのに、スプーンを持って目を輝かせている少女の姿が見えた。
神宮寺さすがにまだスプーンを持つのは早いぞ。
「大丈夫です」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
そう言ってハンディで注文を入力した店員さんは店の奥の方へと戻っていった。
俺たちは待っている間にドリンクバーを取りに行き、再びテーブルへと戻ってきた。
因みに俺が烏龍茶で神宮寺がメロンソーダである。
「明人!楽しみであるな!」
「あぁ、実物はまだ見てないからな。どのくらいの大きさかは届いてからのお楽しみだ」
「うむ。これくらいあるかもしれないぞ?」
神宮寺は自分の両手を肩幅くらいまで開き、大きさを示した。
「いやいや、そんなでかくないだろ。多分このくらいじゃないか?」
俺は両手を顔の長さくらいまで開き、大きさを示す。
「ふむ。やはりメニューだけでは分からぬな。時に明人よこういった場所にはよく来るのか?」
こういった場所というのはファミレスの事だろう。頻繁に来るわけではないが、たまにポテトが食べたくて来ることはあるな。
「よくって訳じゃないが、たまに来たりしてるよ。神宮寺はどうなんだ?」
一瞬俯いた彼女は、すぐに顔を上げて口を開いた。
「我は余り来たことはない......な。昔はよく来ていたような気がするが、最近はな......」
「そうか」
神宮寺にしては歯切れの悪い回答だった。
ゲームセンターの一件もそうだが、神宮寺は余り外出をしないのかもしれない。
前回に続き、今回のファミレスも喜んでいたので、外出が嫌いってわけではなさそうだが......
「お待たせ致しました。こちら断罪の剣パフェでございます」
そんな中、お待ちかねのパフェが届いた。
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