姉の衝動

 



 昼休みの教室。心地良い空気に包まれながら、俺は1人頭を悩ませていた。


 その要因は義姉妹達。とはいえ、自分でもここまで悩むのは初めてだ。


 多少の変化なら、今までなし崩しに受け入れて来た。まぁ圧倒的に近い距離間には、最初こそ戸惑って驚いたけど……全然嫌じゃない。


 ベッドに入り込んで来た時も、理性を抑えるのに必死だった。ただ、慣れなのか……むしろ今では、安眠が出来るバロメーターの様になっていた。


 2人の気持ちも嬉しい。

 それに突拍子もない行動自体が嫌いなわけじゃない。


 けどな……ここ数日の行動は明らかにおかしいよな? 特に美由が。


 あの下着姿事件後、美世ちゃんはいつもの雰囲気に戻っていた。けど、美由は……違っている。もしろますますエスカレートしている感じだ。


 その翌日も、下着姿でベッドイン。

 次の日も気が付けば同じ姿でベッドに居て……その手は俺の息子に触れててさ? 流石にそっと手を戻したよ。


 しかも、それからは寝てる時だけじゃない。顔を洗っている時、わざとらしく耳へ意気を吹き掛け、お風呂の最中には、


『一緒に入っても良い?』


 なんて声を掛けて来る。

 今までも、そういう行動はあった。でも、連日というのはあり得ない。


 そして極めつけは……下着姿でキスマークを付けた事だ。

 何ともいえない感覚を覚えて、目を開けたら……美由が鎖骨の辺りをキスしてたんだ。何してるんだって聞くと、笑みを浮かばせて、


『キスマーク』


 って……その時は止めてもらって、一緒に寝たんだけどさ? 問題はそのあとだった。


 朝になり目が覚め、ふと隣の美由に視線を向けたら、掛け布団は腰辺りまで捲れてた。だから必然的に美由の上半身も見えてたんだけどさ? あろうことか、美由は……


 何も付けてなかった。


 今まで色々と積極的な行動はされてきた。けど、こんな状況は初めてだ。

 ましてや、その全てを目の当たりにするのは初めてで……ピンク色の恥部は底知れぬほど綺麗だった。


 けど、同時にそれを見てしまった事への焦りと同様が襲って来て……美由に布団を掛けたよ。

 そのあと、普通に美由は目を覚ましてさ? 流石に俺も言ったよ? でも、美由の答えは……


『空くんだから全然良い。むしろ全部見て欲しい』


 と来たもんだ。


「……はぁ。流石にここ数日はやり過ぎだろ? 美由の奴。どうするべきか……」


 正直、その行動に嫌な気はしない。むしろご褒美レベルだとは思う。ただ、俺にはまだ2人を女性として扱う勇気がない。まだ、大事な家族という認識から抜け出せてはいない。


 そんなあやふやな状態で、変に事が進むなんて俺は嫌だ。

 だからこそ、そんな俺の雰囲気を汲んでか……今まで2人はそれなりの節度を守ってくれてると思ってたけど……


「屋上行って、外の空気でも吸って来るか」


 こうして俺は、屋上へ向かって歩き出した。




 ★




 よっと。

 昼休みの屋上は、相変わらず人の気配がない。それに今日は、桐生院先輩の姿も見当たらず、完全に貸し切り状態だ。


「さて、こっちの裏側で黄昏てようかな」


 屋上への入り口からは、広々とした屋上が広がっていけど、その丁度裏側にも少しだけスペースがある。日陰になっていて、日光浴には向かないだろうけど……その先には建物も何も無く、まさに完全に人目に付かないポジションだ。


「はぁ……」


 なんて溜め息をつきながら、広がる山々の光景を見ていた時だった。


「やっぱり、ここにいた。空くん」


 唐突に聞こえた声に振り向くと、そこには……


「美由……」


 美由が立っていた。


「空くんならここ居ると思ってた。何してたの?」


 色んな意味でお前の事を考えてた……なんて言えるか。絶対勘違いしそうだし。


「何となく風に当たりたくてさ」

「なにそれっ。ふふっ」


 まじで、普通にしてれば可愛いよな。それに胸も大きい。お尻も魅力的。体は柔らかくて運動神経も良い。友達もすぐ出来るコミュ力に、明るい性格。

 贔屓目に見てもモテる訳だ。けど、俺なんかにこだわらなければ、もっと最上級のイケメン達と付き合えるだろ? その気になればどこぞの御曹司のお眼鏡にかかれるだろう。


 なのに……勿体なくないのか? 自分の価値を知らな過ぎじゃないか?


「どうしたの? そんなに見つめられたら恥ずかしいよ」

「えっ、いや悪い」


「そういえばここ、誰も来ないし誰にも見られないね?」

「あぁ、そう…………っ!!」


 その時だった。不意に唇が何かに覆われたかと思うと、温かいものが入り込んできた。


「んっ……んっ……」


 そして何度も何度も動いたのちに、やっとそれは何処かへと居なくなる。


「はっ……」

「ふふっ」


 余りの出来事に、身動きが取れなかった俺。慌てて美由に視線を向けると、自分の唇を舌でなぞっていた。そう、満足そうな表情を浮かべながら、


 なっ!


「みっ、美由! ここ学校だぞ?」

「誰も居ないからいいじゃない?」


「良くないだろ?」

「私とのキスは嫌?」


「嫌じゃ……ないけど……」

「ふふっ。じゃあ問題ないよね?」


 なっ、何言ってるんだ? てか、美由の様子が完全に家状態なんだけど? こんな事初めてだ。


「あっ、誰も来ないって事は……ねぇ空くん? 私の胸触っても良いよ?」

「はっ?」

「そんなに驚かないでよ。でもね? 私、知ってるんだよ? 空くんが美世ちゃんの胸を触った事」


 それは記憶にも新しい事だった。

 けど、あの時美世ちゃんしか居なかったよな? まさか美由に話したのか?


 そんな疑問が頭を過る。ただ、ここはあくまで学校。そういう行為自体がご法度な場所なのは間違いない。だからこそ、俺は美由に少し強めの言葉を掛けた。


「だっ、だとしても……ここは学校だ。そういうのはダメだろ」

「でもバレなきゃ問題ないでしょ」


 そう言うと、美由はあろうことかスクールウェアのボタンを外し出した。そしてその隙間からはピンクのブラジャーがチラチラと姿を見せる。


「なっ、なにしてんだ。早くボタン直せ」

「いいじゃない? ここには誰も居ない。美世ちゃんもね? バレないよ」


「そういう問題じゃ……」

「そうだね? 美耶ちゃんだけズルイ。私のも触ってよ? 両方……好きなだけね? 空くんの好きにして良いから……」


「だっ、だから……」

「ねぇねぇ……空く……」


「止めろって!!」


 思わず口から出た言葉に、美由の顔が一瞬にして強張った。けど、美由だけじゃない。いや、それ以上に驚いたのは……俺自身だった。

 今まで美由に言った事のないような強い口調。一瞬にして後悔の念が襲いかかる。


 あっ、ヤバい! 強く言い過ぎた。美由に謝ら……


 そして、慌てて美由に声を掛けようとした時だった。


「なんで……」


 美由の表情が……たちまち変わった。それも、今まで見た事のないものに。


「なんで…………」


 えっ? 美由……?


「なんで私のおっぱいは触ってくれないのさ~!」


 美由……?


「空のばかぁぁぁぁぁ!!」


 美……由……?



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