隠れた花園




 どうしてこうなった?


「まさかここでお会いするとは思いませんでしたよ! 桐生院先輩」

「私もだよぉ。あっ、名字呼びだと長いでしょ。全然名前で呼んで良いからね? 美由ちゃん」

「こんな偶然あるものなのねぇ。三葉ちゃんと美由ちゃんが同じ高校で知り合いなんて」


 もう1度言おう。どうしてこうなった?

 えっと、日南先生が遅くなるという事で、ヨガ教室を見学する事になった。

 なんと美耶さんはここの生徒さんで、月城さんと知り合い。

 そして美由と月城さんが2人が着替えて来る間、カウンターで待っていた所にやって来たのは……まさかの桐生院先輩。

 ヨガ教室に通っているという事で、月城さんと先輩はもちろん知り合い。

 美由と桐生院先輩も顔見知り。


 つまり結果として……


「それにしても、通い始めて長いんですか? 三葉先輩」

「そうだねぇ。かれこれ5年になるかな? どうだったけ、恋さん」

「中学1年の時からだから、大体合ってるわよ」


「中学1年生からですか? なんか凄いな。流石に中学生の時にヨガと出会える気がしないんですけど」

「ははっ。私もお母さんの勧めがなかったら、出会うキッカケなかったかも」

「柔軟性は大事だからねぇ。モデルさんには」


「えっ!! やっぱりモデルさんしてるんですか?」

「ないない。この前街で写真撮られた位だって。運動が出来ないなら太るわよ? ってお母さんに脅されてさ」

「またまた、来月の雑誌に載るんでしょ? うちの生徒として誇らしいよ」


 簡単な女子会の始まりだ。

 そして当然、男は置いてけぼり。


 ……なんだこの疎外感は。いや、別に良いのよ? 仲良く話してるし。

 けど、この女性専用の様な空間にポツリといる俺の事も少しは考えてくれてもいいんじゃないですかね?


「って、ヤバい! もう開始の時間だ! じゃあ皆マットの所に立ってね?」

「美由ちゃん前にしよう? 私教えてあげるから」

「はい! ありがとうございます」


 あっ、始まるんですね?

 流石に汗は必須だから、この後診察を控えてる俺は見学のみ。シャワー使えばいいのになんて月城さんは言ってくれたけど……何となく遠慮してしまった。


「はいー! じゃあ皆おはようございます」


 まぁ、気軽に見てますよ。




 ★




 それから月城さんが指導するヨガ教室はスタートした訳だけど……


 ぐっ!! 体痛っ!

 結局、カウンターの前で俺もヨガをしている。


 いや、だってさ? 何気なく見てたら、気が付いたんだ。ヨガ教室の生徒さんは全員女性。そして俺はただただ見学。


 想像して欲しい。ヨガをしている女性を眺める男。

 傍から見たら犯罪でしょ? そもそも今日ヨガ教室に来てる人の何人かはそう思ってるはず。いくら開始前に月城さんが俺の事を説明してくれたとはいえ、はいそうですかとはならないだろう。


 と言う訳で、月城さんの隣で出来る範囲の動きをしている訳だ。


「はい。じゃあ深く深呼吸してー」


 ……それにしても、こうして見てみると……ヨガをする格好って意外とあれじゃないか?


 そりゃ服装は人それぞれだけど、大体の人は上がタンクトップみたいな奴で、下はタイツみたいなの履いてる。

 けど、そのどっちもがピッチリしてる人が多い。だからこそ、体のラインが丸分かりだ。


 月城さんは先生と言うだけあって総じて細い。ただ出る所は出ていて、更にそのくびれからお尻のラインがかなり色っぽい。まさに大人の色気と言う奴だろうか。


 次に桐生院先輩。そりゃ胸は少し控え目だけど、特筆すべきところは腕と足の細さ。そして足の長さ。更には締まりにしまったくびれとツンと突き出たお尻だろう。マジでモデルの様なスタイルですらっとしている。


 最後に美由。あまり言いたくはないが……やっぱりデカイ。ラインが分かりやすいとはいえ、ここまで大きかったかと思うレベルだ。しかもチア部らしくお腹もスラリ。

 こんな体型の子が隣で寝ていたのかと……再認識させられる。


 ヤバいな……これはヤバい。ヨガに集中しないと絶対にヤバい!


「はい! じゃあ次は、ドルフィンプランクいきまーす」


 ドルフィンプランクね……って!

 なんだこれは。いわいるプランクだけど、その……こっちからだと胸の谷間が丸見えっ!


 きっ、桐生院先輩の白い谷間がばっちり見えて……最高かよ。

 美由は……やっぱりデカイ。きゅうり位なら余裕で挟めるよな……ってバカ!


「じゃあ次は、ハッピーベイビーのポーズいきまーす」


 気を取り直して、ハッピーベイビーね。なになに仰向けになって、足を上げる。足の裏は天井に向けて、膝を胸まで持ってくる。これで合ってるのか……なっ!?


 まてまて、このポーズ……お尻のラインが丸見えじゃないか!! しかもぴっちりウェアが相まって余計に分かる。


 って、美由? その浮き出てる跡はなんだ。まっ、まさかパンツ? ヤバいだろ。お尻の形だけでもあれなのにパンツ跡までくっきりだと。

 ん? まてよ……って事は桐生院先輩も……はっ!! 美由とは違う跡だと? それもめちゃくちゃ細いんですが。下着で細い……まさかこれは、Tバックという奴なのでは? きっ、桐生院先輩……大人っすね。


「じゃあ次は、三日月のポーズで!」


 はぁ……いかんいかん。目のやり場が自然とあらぬ方向へ行ってしまう。

 気を取り直して、えっと足を上下に広げ左足は立ち膝。右足は出来るだけ太ももまで床に付けると。


 あとは掌を合わせて上にのばして反らせる!? いっ、痛くないですか? みんな出来て……はうっ!!


 上に反らせてるから、ウェアの上部分も引っ張られて……おっ、おへそが丸見えなんです!!


 きっ、桐生院先輩細っ! ウエスト細っ! しかもやっぱり肌が白くて……なんか現実離れ感が半端ない。しかもおへそ……京南の男子で見た事ある奴いるのか?


 って、ド変態の思考じゃないか。えっと……ぐっ! 隣には美由が居たんだった。

 なんだかんだいってメリハリボディじゃんか。流石現役チア部、無駄な肉がない。

 しかもこっちもおへそが丸出し。


 はっ! いかんいかん。マジで違うことに集中しちゃってたわ。


 けど、マジでヤバくないか? ヨガ教室。


 ここってもしかして……男子入室禁止の隠れた花園じゃないのか!?


「じゃあ次のポーズは……」


 …………なっ、なんだよそのポーズ! ぐはっ!!!



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