一寸法師

 摂津国(大阪府)住吉神社のそばで、一寸法師は生まれました。

一寸法師は成人しても小さい(一寸:3cm)ままでしたが、志は大きいようで、


「京都に出て武士になる。そして姫様と結婚する!!」と言い切りました。


 育ての親のお爺さんとお婆さんは、お椀いっぱいのご飯と小魚を用意しました。


「心配無用!!」と平らげると、残ったおわんを船に、おはしを船を漕ぐかいにして川を下り京都に向かいました。



 旅の途中、仕立て屋の娘が追い剥ぎに遭い、その追い剥ぎを一寸法師が退治しました。


 仕立て屋の娘は「ありがとう。これから京都へ向かいます。それまで守ってはくれませんか?」とお願いしました。


「良いだろう。オレも京都で手柄を立てて武士になる。丁度いい!!」


「ふふふ、その服では武士に取り立ててもらえませんよ。そうだ、私が旅の間、あなたに武士の服を作ってさしあげましょう!」



 京都に到着しました。仕立て屋の娘は、仕立てた服を届けると、また来た道を帰っていきました。


「そうだ、あなた武器はどうするのです? これをさしあげましょう!」


 一寸法師は、仕立て屋の娘にお礼に作ってもらった立派な武士の服。武器に、娘が使っていたお針子の針をもらいました。



 京都には恐ろしい鬼がでるとの噂でした。一寸法師は、これ幸いに、その鬼を退治してやろうと思いました。


 鬼は金銀財宝を奪い、武器を奪い、女を奪っていました。


 一寸法師は、仕立て屋の娘から紹介された、お金持ちの娘の護衛に雇われました。お金持ちなので一寸法師以外にも護衛はいます。


 ある日、3人の護衛と一寸法師、それに娘を乗せたかごがくらい夜道を進みますと、6尺6寸(2m)の赤黒い鬼が現れました。3人の護衛はあっという間に切られて、一寸法師は無視されました。鬼はかごの娘を担ぐと一目散に走り去りました。


 一寸法師は、針の刀で鬼の肩に突き刺しました。鬼は気にせずそのまま根城へ一直線です。さらってきた娘をおりに入れると、グーグーと寝てしまいました。


「こら無視するでない!!」一寸法師は怒りました。寝ている間に退治してしまおうかと思いましたが……「オレは武士になるのだ。卑怯な真似はしない」鬼が起きるまで待ちました。


 鬼が目覚めると目の前に小さな武士がいました。目の錯覚かと思いましたがそうではありません。


「これはまた、小さな武士様だ。寝首を掻かなかったのは褒めてやろう!」


 一寸法師は鬼と決闘をしました。


 鬼の剣が一振りすると、一寸法師は風で飛ばされました。鬼に踏まれそうになり、足の裏に針の剣を立てますが、鬼は平気です。


「がはは、このまま潰してやろうか!!」


「まっ待て!! お前には借りがあるはずだ?」


「ん? 命乞いをするのか?」


「オレはお前が寝ている間に殺すことも出来た。だがしなかった」


「……よかろう。お前に慈悲を与える。このまま立ち去れ!!」


 一寸法師は鬼に負けました。


 鬼の慈悲で殺さないでくれました。


 でも屈辱でした。


 一寸法師は、折れ曲がった針の剣を引きずりながら立ち去りました。


「まて……お前のような境遇のお姫様を知っている」


 鬼は世界を巡って旅をしていました。その先で、おやゆび姫に出会っていました。


「小さきもの同士、心細いだろう。見つけて共に暮らすと良い」



 一寸法師は、鬼にもらった地図を頼りにおやゆび姫を探す旅に出かけました。


 そしていつか修行して鬼を退治してやろうと心に決めました。



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