青春花火
雪蘭
潮風
約三十年ぶりに地元へと戻った。その地は三十年という長い月日を感じさせることもなく、変わらずそこにあった。
それは私に、確かにこの地で青春時代を過ごしてきたということを肌で感じさせた。あいつは今、どこにいるのだろう。
ある夏の夜、海辺で上がった大きな花火。夜空に咲く大輪の花に照らされるあいつの横顔を私は今でも忘れられない。
次々と打ち上がる花火を見ているようで見ていないその視線の先には誰がいたのだろう。
返ってくることのない問い、とめどなく広がる痛みのその全てを潮風のせいにして上京し、目を背け続けた三十年。長いようで短かった三十年はどこか殺風景だった。
あの日二人でした線香花火を、あいつは覚えているだろうか。儚く消えた線香花火の微かな煙を手で払う、その姿すら輝いて見せた青春花火のことを。
あの煙にでもなって、あの日のあいつに会いに行きたい。
あの日となんら変わらない潮風はまるで私に報復するように、頬をつたる涙を攫っていくだけで、何も応えてはくれなかった。
青春花火 雪蘭 @yukirann
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