第三十九話 入学準備
アピロさんの家、もといお屋敷に来てからはや3日が経った。
初日はあの後アピロさんが
「ごめんなさい、ちょっといいアイディアが閃いたの」
との事で自室室に籠もりっきりとなり話ができず一日が終わり
二日目は部屋から出てきたのだが
「お腹が空いたわ」
との事で簡単なスープとパンを用意して提供、その後また再度自室へと逆戻り。
思った以上に身勝手な人である。
そして三日目、ついにアピロ自室からでてきたアピロさん(キャトも交えて)と今後についての話し合いが行われた。
「さて、エーナの今後についての事なんだけど」
「はい」
「とりあえず魔法学園に入学する準備はすべて終えて本人から入学の合意もとれたという連絡を昨日済ませました。おめでとうエーナ!」
「わー!そうなんですね!ありがとうございますアピロさん……ってええええええええええ!?」
「いつの間に合意してたん……って言おうと思ったすけど反応的にこれ多分合意とってないやつっすね」
「あの、アピロさん、私、そのことについて、何も、聞かれてないです!」
思わず机越しにアピロさんへとにじり寄ってしまう。
「確かにあなたへの最終確認をしなかった事は謝るわ。まあ、あなたが拒否したところで無理やり学園へ放り込む予定だったから問題はないけれど」
「私の自由意志は!?」
「あ、ついでにあなたは私の弟子っていう事にして学園と協会側に報告もしといたから今度のあなたの最終決定権も全部私が持つことになるから」
「見えてない所なんかいろいろと横暴してませんか!?私まだ入学は決めあぐねて……」
「決めるも何もあなた、魔法使いになりたいんでしょ?なら入学する以外選択肢はないわよ。もし村が気になるっていうなら暇があるときに帰ればいいじゃない。別に学園から永遠に出られないわけじゃないんだから」
「そう……なんですか?」
「そうよ、長めのお休みだってあるし連絡がとりたいなら手紙だって送れるわよ。
第一ここまでついてきた上にあなたの母親からのお膳立てだってあるのだから断る必要なんてないでしょ?」
「いやその、そうかもしれないですけど、なんというか心の整理とかいろいろ終わってなくて」
「あなたの場合多分一生終わらなさそうだし待っててもしようがなさそうだし、とりあえず入学決定、以上」
「辛辣!?」
「まあまあエーナさん、入学できる事自体凄い事なんすよ。多分学園に入りたくても学費含めていろんな理由で入れない子達はいっぱいいるっすから、……私含めてですけど」
「ああそうだキャトルズ、あなたも入学したいのなら私の方から推薦してもいいわよ」
「ええええ、本当っすか!?……いやでも学費の方の工面がむつかしいっすね。
魔法協会でちょっろっと働いて稼いでた分じゃとても」
「あらそう、ならあなたのお師匠かアルバートから借りたらいいじゃないの。
あの二人、蓄えだけはあるわよ」
「師匠か先輩にっすか?いや確かに入れるチャンスがあるって掛け合えば先輩の方は貸してくれそうっすけどそんな大金を借りるのは……」
「まあ、まだ通常の入学の時期までは時間はあるから少し考えてみるといいわ。
ともかくエーナ、あなたの手続きはもう済ませちゃったからこれから入学までの間はこの屋敷で事前勉強をしてもらうわよ。あなたほかの魔法使い達の子と違って一般的な魔法知識もゼロだからそこらへんも埋めて貰わないとね。というわけで、はいこれ」
ドン、という大きな音と置かれた机の軋むような音と共に何処からともなく現れた何十冊ものぶ厚い本が目の前に置かれる。
「えっとこれ、なんですか?」
「入学までに必要な知識が学べる本よ。一日一冊完璧理解していけば入学までには余裕で間に合うはずよ」
「あの、何百ページどころか何千もありそうなくらいぶ厚いのもあるんですけど」
「そういうのは見掛け倒しだから、以外とすぐ読み終わるはずよ」
「何千ページをすぐ読む?」
「そうだけど、あらもしかしてエーナ、読み書きができないの?」
「いえ、村にいるときに読み書きがわかる友達から一通りは習ったので読めはしますけど……」
「なら問題ないわね。じゃあ一週間後何冊か選んでそこからテストを出すから、ちゃんと学んでおいてね」
そう言ってちゃめっけたっぷりなウィンクをするアピロさん。
以上がこの三日間で起きた事である。
そして現在、わたしは自室に戻り大量の書物に呆然としながら一冊目のページを開き数時間目を泳がせている。
(読めばわかるっていわれたけど、これ読んだだけじゃ全然わからないじゃない)
最初に何となく開いたのは薬学、所謂薬草などを調合して薬を作る事に関係する本のようなのだが、専門的な用語や聞いたことない薬草、時折かすれて読めない部分、開幕から精神状態は既に満身創痍である。
(このままにらめっこしててもなかなか進まなさそうだし、いったん外の空気でも吸って気持ちを入れ替えようかな……)
そう思い私は部屋を出て玄関へと足を進める。
一部ぎぃぎぃとなる廊下を進み階段を下りちょうど玄関の大扉を開けた時だった。
「あっ……」
「……あれ?」
扉を開けた先で視界に映ったのは一人の見知らぬ男の子であった。
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