第20話 舞踏会のできごと4
「うぅー……」
「おぉ、ライアンよ。気がついたか!」
意識を取り戻した私は無意識に声のする方向へ顔を向けた。
そこには美しすぎる顔をしたサバス様が心配そうな表情をして私をじっと見つめてくださっていたのだ。
案の定、急激に極度の興奮状態になってしまい、再び気絶してしまった。
♢
「うぅーん?」
「おぉ、ライアンよ。今度こそ気がついたか」
再び意識を取り戻した私は学習をしていた。
声の主であるサバス様のお顔はガン見しないようにして私の顔の向きを変える。
「ここは王宮の医務室ですか?」
「そうだ、現在満床だが、なんとか個室を確保した」
「お騒がせしてしまって申し訳ございません……。なんといって謝れば良いのか」
「気にすることではない。何故か多くの女性陣がライアンと同じような症状になってしまってな。医務室が満床になってしまうなど前代未聞だ」
そうでしょうね……。
サバス様の容姿の規格外さはこれで立証された。
きっと本人も気がついたことだろう……。
「私が怒ってしまったから驚かせてしまってこのような事態に……。本当にすまなかった」
自覚してないし!!
「サバス様がカッコ良すぎるからですよ」
「ありがとう。だが、以後怒ることについては気をつける」
あれ、なにか話が噛み合っていないような気がする。
「ライアンがあまりにも酷い言われようでな、我慢ならなかったのだ。正直、あの場面で父上の命令に反いてライアンを助けたことについては後悔していない。だが、あまりにも怒りすぎてしまったようで多くの者が失神してしまった……。そばにいたライアンも気を失ってしまったし……。以後気をつけなくてはな」
「……」
そうじゃないんだってば!!
怒られて失神しないって!!
「しかも、私たちの婚約発表はドッキリだったのではないかと噂が広まっている」
「まぁ……そうなっても仕方ありませんね……」
サバス様の話によると、私が気絶してしまったためドッキリだったという説になってしまったようだ。
いくらサバス様が凶器級のイケメンであっても、婚約者の私までもが気絶してしまうことはないだろうと、出演者の演技に無理があったという流れになったらしい。
「後日、改めて婚約発表は正式に行うこととなった。次回は謎の気絶騒動はなくなるといいのだが」
「……難しいかと思いますが」
サバス様の容姿が規格外だと自覚するのはまだまだ先のことになりそうだな。
もちろん助けてくれたときのサバス様もカッコ良すぎた。
容姿、行動、全てにおいてカッコいい。
「もしかして、私を運んでくださったのですか?」
「当然だ。他の者に運ばせるわけにはいかない。触れられるのは困るからな……」
「ありがとうございます……」
サバス様って意外と嫉妬しやすいタイプなのかもしれない。
運んでくださったのは感謝しているが、私の体重がバレてしまったし素直に喜べなかった。
せめてダイエットをしておくべきだったな……。
「戻らないと……」
「病み上がりだろう? 舞踏会はまだまだ続いているが無理することもない」
「いえ、大丈夫です」
食中毒や病気にかかったわけではないのだ。
こんな情けない理由で休むことなどできるわけがない。
「あ、サバス様……仮面は再度装着して戻られた方がいいかと思います」
「そうか。ライアンもそう言うのなら被っておくか」
サバス様が私の手を優しく握ってくださり、再び会場へ戻った。
♢
「さて、今回は残念な発表もあります。この件は陛下より直接報告していただきます」
ちょうど舞踏会最後にやる公開処刑らしい。
いい発表の後に悪い発表、そして全てを解決させてからダンスパーティーが始まるというのがこの国の舞踏会の流れである。
悪い発表で陛下が自らステージに立つというのは滅多にない。
よほど問題があったときくらいなのだから。
「皆の者、顔をあげよ。……さて、今回貴族家の中で不正を行い脱税、及び民衆から不正に金品を巻き上げる行為をしていた者がいる。ワインド男爵!」
ふとワインド男爵の方を見てみると、脂汗がものすごく流れているような状態だった。
悪い知らせの発表があるものは、舞踏会には絶対に参加するよう命じられるので本人も何が起こるのかわかってはいる。
一方、ミーナの方を向いてみると、なぜかニヤけていた。
おいおい……自分の家族が大変な状況になるというのに、どうしてそんなに余裕の表情をしていられるんだよ。
「この度、ワインド本家の行っている対象の店は全てお取り潰し、及び所持している資産を全て剥奪という処罰を行う。更に年俸は十年間の間ゼロとする。次不正を行った場合は爵位を返還の上、王都からの追放とする。一からやり直すかは本人の意思に任せる」
「仰せのままに……」
ワインド男爵がステージの上に立ち、そこで陛下に対して土下座の体勢をとっていた。
これだけで処罰が済んだのだから随分と猶予をいただけたのだ。
きっと、ワインド男爵ならなんとか起死回生を図ろうと努力していくことだろう……。
気になるのはミーナだ。
本家の資産が全てなくなってしまう状況になれば一番困るのはミーナだ。
彼女は家のお金をあてにして生きてきたのだから。
横にいるオズマもまるで他人事のような状態だ。
二人ともどうしてこんなに落ち着いていて平然としているのだろうか、気になってしまう。
「ライアンも気になるか?」
「気がついていたのです? ミーナとは幼馴染ですから、彼女の性格はそれなりには理解しているつもりですので……」
「そうか。不正が公に出てまともな両親になってもらえる希望からあのような顔をしているのか、それとも何かあるのか」
サバス様が首を傾げながらミーナの方を見ていた。
まさかとは思うが、ミーナがまた余計なことをやらかしてしまったのではないのだろうかと、そんな心配をしてしまった。
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