第6話 ミーナとお茶した
【前書き】
今回のお話は、一個前のお話でオズマとミーナが入籍する少し前の時間軸エピソードになります。
『♦︎※』このマークの部分の時間軸になります。
ゴチャゴチャになっちゃって申し訳ございません。
ーーーーーーーーーー
幼馴染のミーナが私と会いたいというので、会うことにした。
『ミーナ、オズマを奪ってくれてありがとう』などとは口が裂けても言えない。
本当は言いたいんだけど。
ミーナのおかげでサバス様との婚約が決まったようなものだから。
もちろんサバス様のことは秘密にしておく。
ミーナがキーキー言って悔しがって大魔神のように怒るのが目に見えてわかる。
いつも喋るときに利用しているカフェで待っているとミーナが現れた。
相変わらずの派手な格好だな。
「ライアン、ごきげんよう!」
「随分久しぶりね」
ミーナはしょっぱなから自信たっぷりで傲慢な態度である。
そりゃオズマを故意に奪ったのだからそうなるか。
ミーナのことだから謝罪する気は一切ないのもわかっている。
「あら、ライアンったら随分と元気そうね」
「まぁ色々とあったので」
「まー! 言っておきますけどね、オズマは私の財産に魅かれてアタックしてきたのよ。ライアンもお金持ちになったんだから、少しは恵んであげれば婚約解消になんてならなかったのよ?」
私もそう思う。
でも、お父様たちが望んだ政略結婚は決してお金がらみではないと言っていた。
だからこそ、お金を何度も恵んでくるオズマ一家にうんざりしていたのだ。
「私も言っておくけれど、オズマとミーナが婚約したことに対して恨みもなければ怒ってもいないわよ?」
むしろありがとうございます、と大声で叫びたい。
性格の悪い女になるから黙っておくけど。
ミーナは私のことを嘲笑ってきた。
「ほっほっほーー……もうライアンったら無理しちゃってー。でも安心しなさい! 私たちもライアンと縁を切るつもりはないわよ。幼馴染だし。でも、オズマと二人っきりで会うのだけはやめてくださるかしら?」
「オズマと二人で会う予定もないから構わないけど」
「絶対の絶対よ!!」
おいおいおい……今までオズマと婚約していたときだって、ミーナからオズマに何度も誘って二人っきりで何度も遊んでいただろう。
自分のことは棚に上げるのか。
ミーナらしいっちゃらしいけれど。
「ところで、ライアンはどうすんの?」
「なにを?」
「もちろん、結婚よー! もう来年には二十歳(ハタチ)なのよ! 婚約者もいないんじゃライアンの家も大変よねぇ……」
おかしすぎて爆笑しそうになった。
ミーナが婚約者を奪ったんだろうが!!
でもその後に続く言葉は決まっている。
ありがとう。
「なんでそんな余裕の表情なのよ? 気でもおかしくした?」
「ううん、ミーナの言うとおりだなって思って」
「でしょう! 早くライアンもいい男見つけなさい! あ、そうだ。今も侯爵家のサバス様って婚約者決めてないでしょう? 縁談申し込んでみら?」
飲みかけていた紅茶を盛大に吹いてしまった。
サバス様の名前が出てきて動揺してしまったのだ。
「そんなに驚くこと?」
「ごめん。まさかその名前が出てくるとは思わなくて……」
「ま、そうよね。ライアンじゃ、どう頑張ったって無理だし。もしライアンがサバス様と婚約できたとしたら、私が裸になって王都中の飢えた男にこの身体を提供してもいいわよ」
「それだけはやめて!!」
冗談で言っているのだろうけど、もう婚約しているから。
そんな出来もしないような公言はしないでほしい。
「なによ……そんなにムキになっちゃって。どうせライアンが結ばれるとは思ってないわよ。それに、噂じゃ王都どころか国中の貴族たちからアプローチかけていても全く動じないって話よ。無理無理」
そんなにモテるのか……。
あの反則級の容姿じゃ仕方ないか。
騒ぎになるからってパーティーや舞踏会でも、滅多に顔を出さないそうだし。
「私のことは気にしなくていいから、ミーナも幸せになってね」
「言葉がおかしいでしょう? 『ミーナも幸せになって』だったらすでにライアンも幸せになっているってことでしょう」
「うん、私は幸せだから」
「まぁ!! オズマと婚約解消したにもかかわらず幸せなんてよく平気で言えるわね」
ミーナがカンカンになって怒っている。
めんどくさいなぁもう。
「今ミーナとこうやって話せて幸せって意味なんだけど」
「あら……もうライアンったら……。だったらさっさとそう言いなさいよ!」
「うん、ごめんね」
いや、嘘なんだけどね。
幼馴染でもなかったらこんなに会ったりしていないし。
この婚約解消騒動で会う機会もなくなるかなと思っていたくらいだから。
まぁそれでも腐れ縁。
オズマのことに未練もないし、今までどおりミーナとは関わり合いは続くのだろう。
「じゃ、そろそろ私はオズマと会うから。会計は私が出してあげましょう! オズマをくれてありがとうってお礼代ね。これで文句なしね」
「……」
なんという勝手な……。
紅茶一杯が婚約者を奪った慰謝料か……。
今までの私だったら怒っていたかもしれない。
だが、今となってはこんなことですら笑えてしまうくらいに脳内がお花畑になっていて幸せでいっぱいなのだ。
サバス様と婚約しているので。
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