嵐月記

@yuzukarin2022

第1話

俺は月渡 嵐月

異世界にTS転生し、神様にスカウトされ、帰還を目標に頑張って幾星霜。

ついに、日本に帰還転生した。


日本は発展していて、俺の時代には夢だったVRゲームも実現化していた。

高校3年間の余暇を全てゲームと勉強に捧げ、国立のVR医療工学科に進学。プログラムと機械工学と医学のちゃんぽんのこの時代特有の学問である。医者よりも2年長く、10年掛かるのだが、どうにか資格も取れた。おめでとう、俺! でも就職試験で落ちた。ぬぬぬ。


 4月1日、途方に暮れた俺は、起業をする事にした。雇ってくれる人がいないなら、自分で会社を起こすしかないしな。

 早速市役所に行って土地を売れるかどうか聞いてみた。無人惑星は持ってるからな。

 ゲートを開いて実演し、惑星の立体映像を見せてプレゼンする。

 この星いくらで買い取ってくれる?


 ゲートの信頼性が心配なので分割で支払いたい? いいよー。


 年間千億(税抜)で50年払いということで、お買い上げいただいた。

 ついでに会社設立も手伝ってもらった。会社名はVR世界創造開拓社。

 ゲート設置装置は初回無料、次回から1000万円。



 これでゲームの開発費はバッチリだな!




 まず両親と弟に1000万ずつ送り、次に最新鋭のサーバーとVR装置を予約、事務所のビル(庭つき)を建設する。ビルができるまでの二年は俺も敵情視察しつつ、ゲームの構想考えよ。


 そうだな。開拓ものとか時流に乗っていていいかも。

 ちなみに親戚とかめっちゃ増えたので電話線は外してメールも無視した。

 政府からの人が来てくれているから、商売相手の政府のメールは見逃さずすんで助かる。

 他国からアポ? 日本を通してください。だって外国語苦手だし。

 





 

 さて、ビルの前には小さな建物が建ててあり、魔力などをステータス計測出来るようにした他、テストを受けられるようにしていた。なお庭はガラスで完全に覆ってある他、洗濯台も完備である。

 看板を立てる。

 求む、クリエイティブで資格があってステータスが高い人、と。お給料はちょっと高めに設定する。

 合格した人が現れると面接許可証が発布されて点数によって奨励金が払われる方式である。

 雇い始めが二年後だからね。仕方ないね。もちろん、一度合格するとその後は点数による差額のみ支払いとなる。テストの点で待遇変わるので、2年間でどんどん点数を上げてきてほしい。

 地球の人も魔力持っているんだよね。眠っているだけで。




 結果、合格者は30人ほどで、面接に来たのは20名ほど。

 替え玉が発覚して入ってこれなかったのが10名ほど。

 そして、残り12名が我が社の社員候補である。


「「よろしくお願いします!」」


 フレッシュな高校卒業生が2人。テストでグングン点数を伸ばしてきた、向上心のある子で紅宮 刹那君と蒼井 海斗君である。刹那君はいいとこの子供らしい。妾の子供らしく、関係ないそうだけど。この子達は異能値がずば抜けて高い。


「「よろしくおねがいします!」」


 孤児で中学卒業生の宇宙 燕君。正直彼は学力足りてないが、やる気はあるので育てて行きたいところ。後、この子も異能値が高い。


「よろしく、創造神様」

「ああ、俺の事は邪神と呼んで」

「よろしく、邪神様」


 高校中退生が1人。布織 桜子ちゃん。彼女もバリバリ勉強するそうだ。魔力が高い。


「「「よろしくお願いします」」」


 大学卒業生が3人。

 柳原 鉄矢君、薔薇園 刀子さん、椿 牙槍君。

 幼馴染で武術家の家の子達らしい。


「よろしくね⭐︎」

 大学中退生が1人。遠野 さとりさん。


 中途採用が3人。

「兄貴、俺頑張る!」

「よろしく」

「よろしく頼むよ」


 我が弟、月渡 葉月。他社でバリバリプログラムをしていたが体を壊して引退していた河原崎 機平さん。

 お年を召していたがステータスがずば抜けて良かったから採用した柴崎 平光さん。

 

「よろしくお願いします」

 ぶっちゃけスパイなんだけど、同じくステータスと能力値が高かった倉田 龍彦君。


 うーん、全員採用!! 本当は20人くらいで想定して準備してたんだけど、甘かったか。

 


 おっと忘れてはいけない、我が社の法務と経理を一手に取り仕切る総務担当 山本 花子さん。

 それと俺のマイベストフレンド蜘蛛子さん。


 総勢15名で、我が社は出発である!!

 

 地下がサーバー、一階はテナント料0円で呼び込んだコンビニ、ファミレス、警備会社の詰所が入っている。二階から五階までは社員寮、六階から受付ロビー、応接室、会議室、医務室、作業スペースなどがあり、七階、八階、九階が空室となる。会社が大きくなったら埋めるのだ。十階は社長フロアでその上は屋上となる。

 山本さんは魔力値が低いので広い二階部屋(20戸)。部屋数三階は魔力が高い人用の兎小屋(100戸)である。四階はゲストルーム、交流ルーム。運動ルーム。五階は機密エリア。もし異世界人とか呼ぶことになったらこの部屋に招待しようと思って準備してある。

 

 早速、取引先に連絡して人数を伝え、VRチェアの為の計測をしてもらい、端末やスマホのセットをする。

 その後会社に戻ってきて会社案内。


 地下と社長室は有事の際の避難所になるのでしっかり案内しないとな。

 三階は一番最後に案内した。

 

「狭っ キッチン風呂トイレと立派なのが一揃いしてるけどさあ。ベッド入らないじゃん」

「何だい、この窪み。何か球状の物を入れて鍵がかかるようになってるね」

「それはね。この窪みにこれを嵌めると、ほら」


 扉が出現して開ける。ガランとした大きな部屋。シンプルな部屋だけど、窓は大きく、灯りも差し込んでいる。まあ、窓は太陽光に酷似した光発生装置と換気装置なんだけど。全員驚きの声を上げた。


「魔力を消費するから、魔力値が高い人だけなんだけどね。部屋のデザインは色々あるけど、最初は一つね。追加の部屋玉やグレードアップがしたい時はお仕事頑張ってな。窪みは平均三つまで取付可能で、完全防音。習熟すれば自分でデザイン可能。水道も電力もネットも中で使えるようになる。魔力は月一で充填すればいいかな。充電は絶対忘れないこと。あ、貸与だから取り付けは俺がするしここの鍵は俺が持ってる」

「すげー!」

「わ、私は使えないんですか?」

「維持が大変だよ? 花子さん」

「頑張るので私も欲しいです!」

 

 んー。本人が望むならいいか。高くはないけど全くないわけでもないし、無理なら部屋を移動してもいい。


「いいけど、一週間に一階は充填するんだよ?」

「はい!」


 部屋玉をセットしていく。皆、魔力の充填をはしゃぎながらしていた。うん、問題ないな。やる気を出して貰う為、最初はガランとした何もない部屋。総務の花子さんは時間掛かるから後で魔力充填頑張ってね。

 そして、設定の終わった社用スマホ、社用端末、IDカード、社用時計。社用記録媒体、充電器、10万円が入った封筒、空魔石セット、お願いカードの入った洗濯袋を配布する。


「社用時計は出入や設備使用や社内マネー使用に必要だから無くさないように! 会社の物資は社内マネーでしか買えないから。社内マネー三種類、現物支給、現金の口座振込の5種類で給料は振り込まれます」

「多!」

「一つは部屋玉とかの特別なアイテムに使うポイントで、R(レア)。一つは、特別ではないが社内アイテムを買えるN(ノーマル)。部屋の模様替えとかに使える他、課金で手に入れられるG(ゴールド)。現物支給は使いそうなものをボーナス的に渡すから。ひとまず100R、1,000N、10,000G、社用スマホの決済端末に10万円入れてある。手元の現金10万と合わせて支度金だ。電子マネーは一階のコンビニとフェミレスでも使える。あと、社員スペースとはいえ社内に人を入れられないから、引越し業者も駄目。断捨離頑張ってくれ。まずはカタログをよく見るんだな。ということで、今日は解散。時間が余ったら空魔石に魔力を入れておくといい。18時に一階ファミレスで宴会を行う。その後二日間休みを与えるから、今日しきれなかった諸手続きや引っ越し作業はその間に済ませなさい。ああ、家族、恋人なら呼んでもいいし同居もいいけど事前申請は必須。カタログの見方はこう」


 時計についてる宝石に触れてレアカタログを呼び出すとホログラムが現れた。


「見ろよ、海斗! 海あるし! 頑張ってこれ買おうぜ!」

「そうだね。海もいいけど、ダンジョンって興味あるかも」


 楽しそうにカタログを見る子供達。実を言うと、着の身着のまま飛び出してきた子も複数いるのよね。

 Gカタログにベッドとかもあるし、魔法で即時設置だし、これでなんとかなるだろう。

 彼らの為の措置である。せっかく確保した高い魔力を持つ子たち。抱え込むぞー!

 

「早速婆さんを呼ばないとな」

「妻と息子に連絡しないと」


 平光さんと機平さんが言う。彼らは既婚者なのだ。


「奥さんとお子さんにはこちらの配偶者端末を渡しておいてください。宴会場にも是非」


 端末を渡して、思い出したように告げた。


「そうだ。この広いビルの掃除を一手に引き受けてくれるハイパー家政婦を紹介します。蜘蛛子さんです」

「うおお!」

「まじか!!」

「キャー!」


 俺が手を振ると、巨大蜘蛛が現れた。


「この10階建てかつ超広いビルを毎日1人でピカピカに磨き上げて庭の管理もできるものだけが彼女に石を投げよ」

「よろしくお願いします!」

「よろしい。洗濯袋のここにお願いカードと届け先カードをセットして、お願いカードに書いてある数の魔力を充填した魔石や用意する物を入れておけばお洗濯、掃除、洗い物、繕い物、布製品の作成がお願いできる。あと、部屋の掃除や洗い物を頼んだ場合はお部屋に入るからえっちなものはちゃんとしまっておくんだぞ」


 さて、俺も引っ越し頑張らないとな。

 一昨日ビルの引き渡しが終わり、諸々のチェックや最低限の準備は二日で終わらせたけど、大変だった。


 電子機器の設置などはしてもらってあるとはいえ、事務用品と食料品、VR機器のセッティング、ゲストルームの準備、泊まり込み用の道具とかも買い込まなきゃだし、忙しいぞー!


 12時だから、まずは食事か。おにぎりでいいか。

 











 18時。


「うおおー! 蜘蛛さん!」


 蜘蛛子さんは機平さんのお子さんの渡君に手をシュビッとあげてご挨拶。

 残りの手はめちゃくちゃ布を作っている。蜘蛛子さんには制服などなど色々頼んでいるのだ。

 既に食事の準備はしてあり、片付けだけ来てくれることになっている。


「それでは、社長よりご挨拶があります」

「ええと、皆さん、今日寝る準備は出来ていますでしょうか」

「まだです!」

「頑張ってまーす⭐︎」

「ばっちり!」

「わからない事があったら相談に乗ろう。とにかく三日後の朝には仕事に集中できるようにしておいてくれ。皆も早く沢山レアを貰って部屋をアップグレードしたいだろ?」

「僕の部屋ほしーい! パパ頑張って!」

「パパ頑張るぞ!」


 ちなみに100Rは中位の部屋が一つ手に入る。100Rでのアップデートで昼夜設定が出来るようになり、400Rのアップデートでいい感じの4LDKが得られる。刹那と海斗が狙ってる海は500R。


「兄貴。スゲー! 惑星日本に売ったのも兄貴なんだろ? どうやって手に入れたんだよ、なあなあ」

「解答と仕事、どっちが欲しい?」

「仕事」


 葉月を黙らせ、酌をして回る。

 引っ越しの進捗を聞きながら。

 すると、我が社最年少の燕くんが泣きそうな顔になっていた。


「僕、手続きわからなくて。部屋の準備、わからなくて」

「あー。この後一緒に準備しようか。明日の市役所も付き合うよ。他にも手続きわからない人いるかな!?」


 ワタワタと手をあげる人が複数。あ、危なかった。


「ついでに希望者にはリフォームのやり方見せるよ」


 結局全員がついてきた。

 俺は希望を聞きながら、部屋を準備していく。

 ベッドとタンスを用意して、蜘蛛子さんに衣装かけを用意してもらってと。

 

 下着と服も全て蜘蛛子さんにお願いした。

 

 次の日は花子さんによる市役所手続きツアーをして、午後は燕君の買い物に付き合う。

 その次の日は引っ越し作業。

 

 出勤日には皆で搬入作業や買い物をした。ネットショッピングでの買い物も。

 結局、全ての物が整うまで面接の日から一週間掛かった。

 その間、機平さんにはホームページを作ってもらう事とした。

 

 会社のホームページでは、蜘蛛子さん含む全体写真を掲載。

 ブログは交代で書くのだが、大体蜘蛛子さんのことである。


 蜘蛛子さんは今日も掃除をしてくれてます。会社はピカピカです。

 蜘蛛子さん洗濯風景。蜘蛛子さんにシーツを作ってもらいました。これ、蜘蛛子さんの作った白衣です。などなど。


 蜘蛛子さんの販売コーナーは受注開始した途端一瞬で注文が埋まる。


 しかし、我が社は蜘蛛子さんの会社ではないので、そろそろ働こうと思う。


「当社はVRによる世界創造で、お客様に驚きと喜びを提供したいと思う。内容としては、惑星開拓ゲーム。時代の波に乗って、地球の人々が開拓をしていくストーリーはどうだろうか」

「邪神様! 同じ内容のゲームが30社くらいから出ています!」

「邪神様! 実際の開拓の大変さもあってプレイヤーは既に食傷気味です!」

「邪神様! そもそも開拓の知識あるんですか!」

「安心しろ、武器トリオ。私にいい案がある! 実際に開拓してみて、その経験をフィードバックしながらゲームを作ればいい」

「えっ 開拓って選ばれた人しかダメだって」

「麗和星のもとの持ち主兄貴だしな、そこは大丈夫だろ」

「燕、葉月、あれは日本に売ったからもう俺には権利がない。しかし、折よく開拓者を募集している所がある。この二年で色々探しておいたんだ」

「そんなの探索され尽くした地球上にないですよ☆」

「地球なんてつまらんぞ、さとり」

「げ、まさか」

「他惑星!?」

「その通りだ。刹那、海斗」

「開拓者を募集って……知性体がおるのか!?」

「平光、冴えてるじゃないか」

「相手にとって不足なし……」

「その域だ、桜子」

「おいおい、そんな危険な場所に妻子は連れて行けないぞ」

「機平は花子と一緒にお留守番だから大丈夫。基礎のワールドデータを作っててくれ」

「そのデータは地球には売らないのですか?」

「いやあ。一つ売ればもう十分だろ、龍彦」

 

 そして、俺はピッとデータを腕輪型端末に配信する。


 惑星の立体映像が出た。


「惑星テランのメーリカ国では、フロンティア国王陛下が開拓の大号令を出していてな。ようは他国人でもなんでもとにかく開拓したら領土を認め配下とするってことなんだ」

「でも開拓なんて素人にできるもんかよ? 見た目も言葉も違うだろうし、良い所だって取られてるんじゃねーか?」


 刹那が心配そうに声を上げる。


「メーリカ国は人種差別も少ない、様々な人種に溢れる国だ。良い場所は俺が用意する。その上、開拓するなら国がサポートもしてくれる。さらに言えば、ゲーム要素も追加する」

「ゲーム要素? 魔法とか!?」


 桜子の言葉に、大きく頷く。


「入社前に根源魔力を測定したな? あれは一度減るともう戻らない、特別な魔力だ。それを使えば、魔物の始祖卵を孵化できる」

「始祖卵?」

「魔王の産む、魔物の始祖を生み出す卵だ。まー卵ガチャと考えてくれていい。要は、最初の卵は何が生まれるかはわからないが、後の世代は固定される。蜘蛛子もそれだ」

「おお!」

「更に、異能を解放する。刹那と海斗は火とか水とか出せるだろ。それを強力にしたり、まだ異能が目覚めてないのは目覚めさせたりする」

「魔力は? 根源魔力、異能値、魔力を測定したろ?」

「魔力は普段魔石に込めるので使ってるだろ。それ以上は今は難しいからおいおいな」

「オラ、ワクワクしてきたぞ!」


 桜子は興奮して叫ぶ。


「じゃあ、異能解放して開拓に行ってくれる人!」


 花子さんと機平は留守番だって。でもまあ全員か。

 

 1人1人丁寧に見て、卵を選ばせていく。


 刹那は炎。海斗は水。燕君は瞬間移動。この3人は異能値がめちゃくちゃ高かった。

 桜子ちゃんは花弁を操って切り刻める。でもどっちかっていうと魔力特化。

 武器トリオは、魔剣、魔槍、魔弓。さとりが遠隔視。この4人は平均して強い。

 機平は電撃。平光は探知だが範囲がすごく広い。葉月は植物を操る。

 龍彦は不可視の爪攻撃ができる。

 花子さんは魔力も少なく根源魔力もあまりないが、異能値が高めで治療ができたのでホッとした。

 植物を元気にしたりかすり傷を癒す程度だが、当人はすごく喜んでいた。

 

 ということで、一週間の訓練の後、蜘蛛子さんお手製のローブを着て、惑星に降り立ったのだった。

 


 

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