第6話 フットマンの感想
この邸宅は本当に広い。
歴史ある建物でカーライル侯爵家が興された時に建てられたのだという。この国に侯爵家は5家あるが一番大きな邸宅を構えているのがカーライル家だ。
僕の家は代々カーライル家の執事を務めている。
僕はまだ見習いでフットマン、現在の執事は僕の父のジョージだ。その父を筆頭に何人もの使用人が働いている。こんなに広くて部屋も沢山あるのに住んでいる人は少ない。ほぼ使用人で邸宅には主人とその娘しかいなかった。
先代の旦那様は今の旦那様のお兄様で、とても健康な方でいらしたのに突然の流行り病で亡くなられてしまい今のジョセフ様が爵位を継がれた。
先代はまだ結婚もされていなかった為跡目争いなどもなく良かったと父は言っていた。でも新しく爵位を継がれたジョセフ様は親戚筋周囲から早く結婚をして兄と同じ轍を踏まないようにしろと急かされたようだ。
ジョセフ様と僕は年が近いためジョセフ様は弟のように僕に接してくれた。親戚筋から結婚を急かされていること、侯爵家に取り入ろうとする他家からの縁談の話など少々の愚痴をこぼされたことがよくあった。
ジョセフ様が結婚されたお相手はとある公爵家の3女で美しい方だったが体が弱く、社交活動もされず邸宅で静かに過ごされていた。
ひとり女児に恵まれたがどうもあまり可愛がって居られないようでフランシス様は乳母や侍女たちと生活されていた。
その奥様も2年前に亡くなられてしまったが、旦那様が再婚なされてからはこの邸宅にも生気が蘇ったようだ。
新しい奥様はフランシス様をとても可愛がり、二人のご兄弟もできた。このご兄弟も競うようにフランシス様を慈しまれた。
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