第12話

 そして次の日。早朝。

 メッセージアプリで「寝坊したから先行っててくれ」とだけ伝えると「わかりました」という返信が来た。

 実際、寝坊などはしてないが。


「善一くんっ。帰りましょう」


「⋯⋯悪い。今日も用事があるんだ」


「そ、そうですか⋯⋯」


 下校も断り、丸々2日白瀬と登下校を共にしなくなった。

 たった2日、ぼっちで登下校するのがこんな辛いなんて⋯⋯。いや、白瀬がいないからか?


「善一くん、新しく出来たカフェに行きませんか? 最近行ってないですし」


「悪い⋯⋯今日も————」


 こうして白瀬との行動を断り続けて1週間が経過した。

 流石の俺も1人で帰るのに慣れ始め——てない。

 なんか物足りないというか寂しいというか⋯⋯。


「お前ら、喧嘩でもしたのか?」


 最近の俺の様子を見かねたのか、優斗がそんなことを尋ねてくる。


「してない⋯⋯」


「じゃあなんで最近一緒にいないんだよ」


「それはまあ⋯⋯」


 いや、白瀬の恋愛事情を勝手に話してしまっても良いものなのだろうか。

 ⋯⋯冷静に考えれば駄目だよな。


「⋯まあ、色々訳があって距離をだな⋯⋯」


「なんだそれ」


 優斗は苦笑するだけで、深く追求してこない。

 興味がないのか気を遣ってるのか⋯⋯どっちにしろ俺からすればありがたい。


「んじゃ、気晴らしにカラオケでも行くか!」


「⋯⋯ん、ああ、いいかもな。テストもまだ先だし」


「不良なんだからテストを気にかけんなよ⋯⋯」


 ちょっとした会話をしながらバッグを持ち、廊下へと出た。

 あ、一応白瀬に言っといた方がいいよな。

 1週間前まで一緒に登下校していた仲なんだし断りなしは不味いよな。


「⋯⋯あっ」


 廊下を出たところで、丁度向こうから白瀬がこちらに歩いてくるのが見えた。


 ⋯⋯いつもは1人で俺のクラスの教室まで来るのだが、今日は男女6名ほどで知らない奴らと一緒にいた。クラスメートだろうか。


 丁度いいし、今言っておこう。


「あ、白瀬。今日も———」


 声をかけたはずだった。

 しかし、白瀬はまるで俺が見えてないというように素通りしていった。

 クラスメートたちと楽しそうに、笑顔で話しながら。


 思考停止して固まっていると、白瀬たちは既に階段を下って行ってしまった。


「⋯⋯あ、あれ? おかしいな⋯⋯俺、声出してたよな?」


「お、おう。出してたな⋯⋯」


「はは⋯⋯なんかおかしいな」


 何故かわからんがめっちゃ目頭が熱い。

 さっき、俺は完全に白瀬に「無視」されていた。

 その事実が俺の頭の中で激しく反復している。


「⋯⋯やっぱり喧嘩してんのか?」


「⋯⋯」


 結局、カラオケは行かなかった。

 今の俺はガラガラの声しか出ない気がするし。



————————————————————————


 ちょっとグダってすみません。

 こっから更新頻度上げたいな〜。

 明日は白瀬視点を上げたいと思っています。

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