死への渇望と肯定
御手洗孝
序。
生まれたものには必ず死が訪れる。
そう、死が訪れるのが普通であり、それが自然の摂理。
でも、私は違った。私の体には死が訪れない。
そういう体に私は作られたのだ。
始めは私自身、何も疑問に思うこと無く暮らしていた。何時からだろう? 私がこの体を変だと思い始めたのは。
同じ様に教育センターに通っていた友人達はその姿を変え、いつの間にか皺だらけになっていった。
私は変わらぬ姿なのに。
誰もが、始めは私を美しいと賞賛する。
そして、いずれ誰もが私を化け物だと恐怖する。
そうして私は世間から隠れるようにして日々、過ごすようになった。
薄汚れた臭く、そしてネズミ程度しか来ない地下で、ねずみよりも汚いボロ布をかぶって生活をする私。
惨めだ……。
そう、惨めだとそう思い続けている。
自ら死を望もうとも、その思いは決して遂げられる事は無い。
何故、私は此処にいて、何故、生きているのか? その意味を見出す事も教えてもらう事もできず、ただ、闇の中で消えぬ命を燃やし続けているのだ。
日の光を浴びぬ私の髪の毛はいつの間にか色を失い、銀色に輝くようになってしまった。
太陽の眩しさが、以前よりも数倍輝いて感じられ、その光は私の瞳の奥に鈍痛を起こす。
痛みを感じるたび、私は自分が生きていると言う事を実感してしまう。
あぁ、この世に神がいるのならば……。私が生まれた理由を答えよ!
あぁ、この世に魔がいるのならば……。私の命の炎を消してくれ!
限り在るからこそ、精一杯に生きられる。限られた中だからこそ、自分を磨いていける。
もう、痛感している。そう、痛感だ! 死を望む事を贅沢だと神に仕える者は言った。
そうなのかもしれない……。望んでも望んでも与えられぬ私の贅沢な希望。
誰か、誰か。誰か!
私を殺してくれ。
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