第20話 よくもここまで下衆な台詞を……

「時間無いから急いでみぅ!」

「あーん。待ってよねいねちゃん」


オープニングセレモニーも終わり、

3位決定戦の為に15分ある準備時間を

利用してフィフネルチームへと向かう二人。


伊集院まりぃはロボから降りて

椅子に座りゆっくり紅茶を飲んでいた。


「まりぃさーん!」

「あら?天使さん。バトル間近なのに

 追放天使から降りて大丈夫なの?」


追放天使の操縦方法から、

体中にセンサーを取り付けたり

セッティングするのに時間がかかるのを

まりぃは知っている。


「ワガママ言って降りてきました。

 そんな事よりまりぃさん!」


「何かしら」


「さっきは本当にありがとうございました!」


ねいねは深々と頭を下げる。

それを見てまりぃはクスっと笑った。


わざわざお礼を言う為にロボから降りて

更にバトル直前の人に会いに来る。

これが水月知奈の人柄であり魅力なのだ。


「さて、なんの事かしら。

 私はTV局の人に”アドバイス”をしただけよ?」


まりぃはドヤ顔で答えると更に話を続けた。


「そういえばTV局の人から聞いたけど、

 応援メッセージの依頼を出した時、

 彼は”渡りに船だった”って即答でOKしたそうよ」


「えっ……?」

「良かったわね」


まりぃはねいねに向けて笑顔を見せた。


「さ・て・と!直前に天使さんの顔も見れたし

 気持ちよく戦える。ありがとう。行ってくるわ!」


「は、はい。行ってらっしゃい!」


まりぃは歩きながら手を振って

パラスアテナの方に向かっていった。


二人はまりぃを見送った後、

フィフネルピットから離れ同好会チームの元へ

早足で歩きだした・


「さて、私達も再セッティングしなきゃね!」

「うん!……あれ?」

「ん?」



前にいる男が手を振りながら

二人に対して声をかけてきた。



「おっ。誰かと思ったら水道橋チームの

 パイロットじゃないか!」


「あなたは確かホソダチームの……」


「俺はカイエンのパイロット、高槻だ「


ヘラヘラした顔で高槻は話を続ける。


「へぇ。ロボから降りたらあんた

 こんなに小っちゃかったんだw

 えーと。ねーねちゃんだっけw」


高槻はあからさまに挑発的な態度を見せる。


それに対してムッとするみぅをなだめながら

いつも通りの態度で返す。


「ねいねです。決勝戦では良い戦いをしましょうね」


「フンッ! 決勝戦だからせめて

 3分は持ちこらえてくれよ?すぐ倒れたら

 折角見に来てくれた観客に悪いしな」


「……」


「……ま、その時は天使をなぶり殺しにすればいいか。

 一部のマニアは大喜びするだろうしな。アッハッハ!」


よくもここまで下衆な台詞を吐けるものだと

怒りを通り越して感心すら覚えてしまう。


「ねいねちゃんもう行こう?

 早くいかないと戸坂会長に怒られちゃうよ」


「そうね。それじゃ、決勝戦で」


二人が高槻の横を通り抜けていく時、

高槻は言ってはいけない言葉を吐いた。


「あいよー。しかし

 あんな 紙 芝 居 の男 にうつつを抜かす

 お前なんて俺の敵じゃねーがなw」


「……!」


みぅは一瞬ビクッと走りながら

ねいねの顔を見た。


「…………」


ねいねは表情を変えずそのまま

同好会チームの方に戻ってきた。


「遅いじゃないか。さっさと準備する!」

「すみません会長!」


ねいねは黙々とトラッキングセンサーを

取り付けていく。


「ね、ねいねちゃん……!」

「あー。大丈夫よ気にしないで。みぅ」



準決勝でパラスアテナにとどめを刺す

絶好のチャンスを完全に無下にして

天井をコンコンとノックした時から

ロクなパイロットではない事は知っていた。


「……」


あそこまで下衆だとは思わなかったけど。


「あー。それでも……」


あいつは言ってはいけない事を

いっちゃったかな?



「……許せないね!」



ねいねは高槻を明確な”敵”とみなした。

これはとても珍しい事である。


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【次回予告】

【1月2日更新!】


"伊集院まりぃショー"が始まる。


次回 推しVロボ第21話

バカと天才は紙一重と言うけれど


お楽しみに!

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