第19話 まいったな。ここまでされたら……

「うわぁっ!」


いつもとは違う”熱気”に思わず

ねいねは思わず声をあげた。


開かれた幕の向こうからは

いつもより多くの観客と拍手や声援、

そして高揚感で溢れていた。


これは準決勝までとは少し違った雰囲気で、

新鮮ですらあった。


これがゴールデンタイム、

生中継の力なんだろうか。



「これが決勝戦なんだ。凄いね……」


一方、みぅや同好会メンバーは

いつもと違った雰囲気に気圧されて

流石に少しおどおどしてるが、

戸坂会長と内海さんはいつもの

”あやしい笑み”を絶やさない。


この度胸と自信はどこから来るのだろう。

本当に凄い二人だなとねいねは思った。


……

………


『さぁ、それでは各チームへの応援VTRを

 見ていただきましょう!どうぞ!』


各チームの簡単な紹介の後、

会場にある多数の大型ビジョンから

最終日用の特別応援VTRが流れ始めた。


「そっか。お店でもTV収録したって言ってたな

 完全にムービーの事忘れてたわ」


ねいねは撮影には一切参加しておらず、

当然内容についても知らされていない。


どんなのが流れてくるんだろうと

ねいねは少しずつワクワクしてきた。


……


いかにも企業っぽい雰囲気で

応援アピールしてくるホソダとコマス。


一方、お店同様に格調高い映画のような

映像を見せつけるフィフネル。


そして、ロボットアニメ同好会は

水道橋大学の学生や学長の応援から始まり、

エンジェル・ハイロゥのスタッフや常連客からの

「ねいねちゃん頑張ってー!」という

いかにも学生らしい緩い感じで進んでいく。


『こういうのインターハイでは

 無かったから面白いし嬉しいな。

 みんな、本当にありがとう……』


と、ねいねはニコニコしながら各チームの

応援VTRを見ていたが、次の瞬間

心臓が飛び出そうな映像を見る事になる。



「!?」



ビジョンに映ったのは見慣れた景色。

液体の入った大きなカプセルと

その中にいる二次元の男性。


「えっ!? 嘘っ! 嘘っ!!?」


そして、その男性は少し間をおいて喋り始めた。



「Vチューバーの八月蒴日・パトラクシェです。

 ねいねさん。決勝戦、頑張って下さいね」



その後すぐにカットが変わり他の映像が流れるが

ねいねは今、目の前で起こった事が信じられず

口を馬鹿のようにポカンとさせていた。


これは一体……!

ほづみ君はどうやって応援メッセージを送ったのか。

そもそも何でこんな事が起こったのか。


ねいねがその答を必死で考えてる時、

横から視線を感じた。


「……へ?」


視線をそこへ向けると、少し離れた所で

”してやったり”とニヤニヤしている

伊集院まりぃがいた。


「まりぃさん……ハッ!」


そのいたずらっ子のような目を見て

ねいねは全てを悟った。


お店に凸して全ての事情を知ったまりぃは

すぐにTV局に連絡を取ってほづみ君に

応援メッセージを依頼させ、

それをそのままTVで流させたのだと。


フィフネル参戦の時もそうだったけど、

伊集院家の力とまりぃさんの即断即決、

即実行は凄すぎて恐ろしさすら感じてくる。


しかし、そのまりぃさんの気持ちがとにかく嬉しい。


推しの最後の配信がリアルタイムで見れない私への、

労いであり、サプライズプレゼントであり

叱咤激励でもある。


「まいったな。ここまでされたら……」


私は更に頑張らないといけなくなった。



『ねいねさん。それでは決勝戦へ向けての

 意気込みをお願いします!』


そこへインタビュアーからマイクが向けられる。


「はいっ!私を応援してくれる皆さんの為にも

 全身全霊で戦ってベストを尽くします。

 どうぞ私を見ててください!」


全てを吹っ切ったかのような満面の笑顔と声に

同好会やみぅ、そして伊集院まりぃは安堵して、

観客からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。



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【次回予告】

【12月16日更新!】


3位決定戦の前にお礼を言おうと

フィフネルチームに向かったねいねとみぅ。


しかし、そのあと2人は

”嫌な奴”と出会う事になる。


次回 推しVロボ第20話

よくもここまで下衆な台詞を


お楽しみに!


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