(290)白々しい

 可愛らしい、恐ろしい、美しい、美味しい、逞しい・・・。


「●●しい」と言うのは形容詞の代表的な表現方法だが、中には「何故そんな表現になったのだろう」と思うものもある。


 例えば「白々しらじらしい」というのは、わざとらしさや疑わしさなどが織り交ざった表現の様な気がするのだが、なぜに「白」という色を重ねた表現になっているのだろうか。


「白黒はっきりつけようぜ!」などという時の「白」というのは、むしろポジティブな意味で使われる。


 なのに、ネガティブな意味で「白」という文字を重ねて使っている「白々しい」という言葉は、一体どういう状態を表しているのだろうか。


 そういえば、最近の僕の食生活が偏っているせいか、彼女から「肉々しい臭いがする」などと言われた事がある。


 なるほど、最近はタンパク質といえば「肉」だったせいか、身体が肉で構成された臭いになっているという事なのだろう。


 大豆や魚でもタンパク質を摂取するようにしなければ、健康にも影響しそうだ。


 日本語として正しいかどうかはともかく、「肉々しい」という表現はとてもイメージしやすいのだが、「白々しい」と言われた場合は、「どんな状態を想像すれば良いのか」がよく解らない。


 仮に色を使って表現するならば、ネガティブの代表格でもある「黒」を使って「黒々しい」とかの方がしっくりくる気もするのだが。


 だって「神々こうごうしい」とかも、まるで神が宿ったかのような状態を表す表現な訳で。


 という事は、怪しげな状態を表す言葉は、やはり「黒々しい」とかの方が正解なのではないのだろうか。


 もしかしたら、「黒と決まった訳ではない状態」を表現しているのだろうか。


 だとすれば、白と黒の間という事で「灰々しい」とか、そういう表現があっても良さそうなものなのだが、僕はこんな言葉を聞いた事が無い訳で。


 こんな事を考えていると、何となく「白々しい」という言葉の本来の意味が「純白でけがれが無い状態」であるのではとさえ思えてくる。


 という事は、何となく使っている「白々しい」という言葉は、実は「まるで清廉潔白な状態のような」という意味なのかも知れないな。


 なるほど、これならイメージに合致する気がする。


 つまり、物語の中で登場人物が「白々しい態度」をとっているという時の表現は、それを見ている人物には「まったく黒く見えない状態」という感じだという事か。


 内面に腹黒さを含んでいるにも関わらず、外面はそれこそ「白々」としている状態を指して「白々しい」と表現すべきという事なのだろうな。


 うむ。


 何となく問題がひとつ解決した気がするな。


 という訳で、これからは「白々しい」という言葉をそうした場面で使おうと思う、そんな今日の僕なのであります。

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