(96)恩人の最後
3月と言えば国内企業の大半が「決算期」だったりする。
僕の本業の取引先も同様で、3月に入ってから、やたらと「年度末までに納品して下さい」という案件が増えた。
仕事が来るのは有難いのだが、こんなに案件が重なると、さすがに資金力が無い個人事業主には荷が重い訳で。
とはいえ、来る仕事は極力こなしたいというのも本音な訳で・・・
そんな訳で、しばらく執筆から遠ざかり、ここ1か月は仕事ばかりしていた僕なのでした。
そんな中、メインの取引先である会社の相談役の方が、すい臓がんを患って入院する事になった。
もう高齢の方ではあるが、とはいってもまだ70歳~75歳くらいで、毎週テニスを楽しんでいる様な元気な老人だったのだ。
元々は外資系金融機関の役員を務めていた事もある方で、高給取りだったおかげか退職金も高額で、年金も平均よりも沢山貰えていた様で、優雅なシニア生活を送っていた方だった。
たまにその会社に出入りする僕の事を高く評価してくれていて、僕にとっては良き理解者でもあったその方の入院は、ちょっと衝撃的な出来事だった。
で、本日。
その方が惜しくも亡くなってしまった。
10年位前、まだ僕が自営業としては駆け出しの頃、その会社との取引で僕に好条件を提示してくれたのもその相談役の方だった。
資金力が無い僕との取引を円滑に行う為に、受注後にすぐに支払いをしてくれるように社長に掛け合ってくれたのもその方だ。
僕にとっては、起業して間もない頃に助けてくれた恩人であり、その後の成長を見守ってくれた理解者でもある。
僕が間違った方向に進みそうな時にはそれとなく説教をしてくれたし、難しい取引をする時にはアドバイスをしてくれた。
時々僕を食事に誘って、近所の大衆食堂で食事をご馳走してもらったりもした。
英語が堪能な方だったので、僕が外資系企業に英文の提案書を作る際には、資料の英文のチェックをしてくれたりもした。
そんな僕にとっての恩人が今日、惜しまれつつ息を引き取ったそうだ。
その場に僕は居る事が出来なかったが、家族に見守られながら息を引き取ったとの事だ。
僕は心からの感謝を心の中で唱え、しばらく合掌していた。
不思議なもので、そうして心が揺り動かされたせいか、仕事で疲れていた僕なのに、執筆欲がムキムキと湧きだしてきたんだよね。
で、いくつかのエピソードを書き溜める事ができちゃった訳で。
これもあの方の魂が激励に来てくれたという事なのかも知れないな。
うん。
ヘタってばかりじゃいられないな。
僕は生きてるんだもの。
生きてる以上、頑張っていかないとな!
という訳で、これからはちょっと踏ん張って行こうと思う僕なのでした。
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