(80)幻覚

 危なかった。


 とても危なかったのです。


 激務が続く事は分かっていたのだが、今日は疲労のせいか「幻覚」を見た気がするのです。


 今日は赤坂の顧客にコンサル業務で往訪し、無事に業務を終えてオフィスに戻ろうと車を運転していたのだが、広い道路が混雑していたので、渋滞で眠くなる事を懸念して、裏道を通っていたのです。


 で、信号機のある交差点で信号が黄色になったので、

「交差点を通るまでに赤になりそうだ」

 と思って車を減速させ、停止線でピタリと止まった訳です。


 案の定、信号機が赤になったので、交差点で信号が青になるのを待っていたのですよ。


 で、信号が青に変わったので、車を発進させようとギヤを1速に入れてアクセルを踏み、クラッチをつないで発進しようと前方を見ると、何と信号が「赤」なのです。


 僕は慌ててブレーキを踏み、ギリギリ交差点に進入する手前で停止できたのだが・・・


 いやいや、さっき信号機が「青」に変わるのをこの目で見た筈だぞ?


 だからこそ発進しようとした訳で。


 なのに、いざ発進しだした時に何気なく信号機を見ると、光っていたのは紛れも無く「赤」。


 どゆ事!?


 確かに昨夜からオフィスに泊まり込みで朝まで仕事していて疲労が溜まってはいたが、それでもコンサルも無事に終えられたし、意識はしっかりしていた筈だ。


 確かに気を抜いた途端に眠ってしまいそうなくらいの眠気は感じていたが、渋滞に巻き込まれたら眠気に負けそうだからと、わざわざ裏道を通って眠気を感じにくい環境を作っていたのに。


 ・・・・・・・・・もしかして、幻覚?


 たった1日徹夜した程度で、幻覚を見てしまう程に疲労困憊ひろうこんぱいなの?


 先ほど30分ほど仮眠して、今はそこそこ頭はスッキリしているつもりだ。


 事実、こうしてカクヨムに今日のミステリー現象について記述するだけの余力もある。


 が・・・もしかして・・・、今こうして執筆しているのも、実は幻覚で、僕がそう思い込んでいるだけだったりする?


 という訳で、自分の認知能力に自信が無くなっている僕は、後日この文章を自分で読み返す為に、こうして記録しておく事にします。


 今夜もまだまだ仕事が山積みなので、連日になるがオフィスに泊まり込む可能性がある。できれば朝までに仕事を完了させて、送るべき相手にメールを送り、金曜日は半日くらい眠ってやろうとか思っているのだが・・・、はたして僕はちゃんと仕事ができているのだろうか?


 明日の朝目覚めたら「全然仕事が進んでいませんでした」なんて事になっていないだろうか?


 ・・・・・・・・・これを読んで下さっている方にお聞きしたいのだけど・・・。


 僕、ちゃんと文章を書けてますか?

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