(69)ざまぁ

 カクヨムでライトノベルっぽい作品を読んでいると、よく「ざまぁ」という単語が目に入る。


 要は「本当は能力があるのに不当に解雇されて、結果的に解雇した方が後で後悔する」というテンプレがあるらしいのだが、それらの作品に対して食傷気味な読者も多い様だ。


 まあ、かくいう僕もその一人ではあるのだが、とはいえ僕は「ざまぁ」が嫌いではない。


 というか、むしろ大好きだ。


 本当に矮小わいしょうでみじめな人間だなぁと自分でも思うが、何度でも言おう。


 僕は「ざまぁ」が大好きだ。


 ただし「ざまぁ」なら何でも良いという訳では無い。


 好きだからこその「こだわり」がある。


「寿司が好き」という人が、クソ不味い寿司に我慢ならないのと同じ様なものだ。


 僕が「ざまぁ」を好きになったキッカケは「世界名作劇場」のアニメで見た「小公女セーラ」だった。


 お金持ちで優秀でありながら可憐で謙虚で美しい少女「セーラ」が、親の死をキッカケに学園で辛い生活を送らなければならなくなり、特にミンチン先生には酷い仕打ちを受けながらも、清く正しく、そして健気に生きるその姿に、心を打たれた人も多い筈だ。


 苦境を乗り越えた先、最後は「ダイヤモンドプリンセス」として返り咲く訳だが、学園に対するセーラの粋な計らいも含め、何とも気持ちの良い「ざまぁ」がそこにはあった訳で。


 そうした「これぞ絶品料理」とでも言いたくなる様な「ざまぁ作品」が僕は大好きな訳である。


 しかし、世の中にはどうにも安っぽい「ざまぁ作品」も沢山あり、これが読者に不快感を感じさせる所以ゆえんなのではなかろうか。


 主人公が大した努力もせずに「ざまぁ」するとか、「雇い主がアホ過ぎるだろう」と言いたくなる様な「ざまぁ作品」とかは、僕もあまり読む気がしない。


 だけど期待しちゃうんだよなぁ・・・、どこかに「超絶美味なざまぁ作品」が埋もれているのではないかと・・・


 何なら自分で書いてしまおうかとも思って見たり。


 でもなぁ・・・、僕ってば、求める物のクオリティは高いくせに、僕自身は無能で卑屈な人間だからなぁ・・・


 今日は仕事で新宿を走っていたのだが、後ろからキケンな運転で僕の車を追い抜いて行ったタクシーが、すぐ先の交差点でパトカーに止められているのを見て、

「ざまぁw」

 とか思ってしまう程度の男だからなぁ・・・


 しばらくは、「面白いざまぁ作品」を「探す側」の人間でいた方が良さそうだな。


 今の僕が「ざまぁ」を書いても、きっと安っぽい作品になっちゃうだろうからね。

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