(46)建築用語

 僕は昔、建築士だった。


「だった」というのは、今はもう建築の仕事に携わってはいないから、資格の更新もせずにいたので、ただの人になったからだ。


 周囲からは「勿体ない」と沢山言われたが、2級建築士の資格など、中途半端な資格の割に、更新の時には結構なお金が必要だし、昔設計した建物の責任も負い続けなければならないし、もうそういうのに疲れてしまった訳だ。


 しかし、今日は久々に都内の庭園を散歩して、趣深い建物を見ていたせいか、ちょっと建築士時代の事を思い出したりしてしまった訳だ。


 建築の中でもとりわけ木造建築が好きな僕は、特に古来の職人技で作られた建築物を見るのが好きだ。


 で、そんな建物を見ていると、どうしても出て来るのが「専門用語」だ。


 それも「建築部材の名称」などの「建築用語」だ。


 建築用語は漢字で書かれても、読みにくい漢字が沢山ある。


 建物の「むね」や「はり」は比較的誰でも知っている漢字だと思うが、「垂木たるき」「根太ねだ」「大引おおびき」「筋違すじかい」などの構造部材になって来ると、業界人しか読めない人が居なくなってくる。


 建築法規に出て来るものの中にも「延面積のべめんせき」などと言われても、何の面積なのかが分からない人も多いだろう。


 他にも、文字は読めても意味が分からないものも沢山ある。


「道路斜線」「隣地斜線」「北側斜線」「採光斜線」などが良い例で、文字は読めるけど「何の斜線?」と疑問に感じるものばかりではなかろうか。


 実は僕が小説を書く際に街の建物を表現する際、こうした法規的な事や構造的な事を頭の中で思い描きながら表現している。


 が、これを文字で表現しても、業界人にしか伝わらないだろうと、あえてこうした表現を避けている訳だ。


 仮にこういう表現をふんだんに盛り込んでも、恐らく建築の事が分からない人には意味が解りにくくて読み飛ばされる事は必至だろうし、あまりにこうした難しい表現が続くと、そもそも物語も読んでもらえない気がするのだ。


 しかし、分かる人には本当に分かりやすい表現でもあり、こういう時にいつも表現の方法で苦労する事になる僕が居る訳で・・・


 こうした専門用語、今後はどう表現していくべきなのか、まだまだ課題は山積みだなぁ・・・


 僕の文才の無さが、いつもこうした課題を僕の元に投げつけて来る。


 本当に難しいですね。


 文章を書くっていうのは。


 とはいえ、表現する事は楽しい訳で。


 これからもボチボチこうした課題に向き合いながら、頑張っていこうと思います。

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