スペーストラベラー

クロノヒョウ

最初の星


最初の星




 脱出ポッドが最初に着陸したのは、偶然にも宇宙でのサービスエリアのような星だった。


 広い駐艇場にはたくさんの宇宙船が停まっている。


 大きな建物の中に入ると様々な宇宙人たちがガヤガヤと買い物をしたり食事をしたりと休憩している。


 (ちょうどよかった)


 私はこれから永住する星を探すことになる長い旅のために燃料を買い込むことにした。


「ご旅行ですか?」


 声をかけられ振り向くと店員らしきスリムなロボットが立っていた。


「いえ、旅行ではなく住む星を探しています。脱出ポッドの燃料はありますか?」


「おや、そうでしたか。脱出ポッドでしたらそんなに燃料はいりませんね。こちらにいいモノがございます」


 ロボットについて行くと建物の外へ出た。


 外の広い敷地にはこれまたたくさんの露店が並んでいた。


 しばらく歩いてからロボットは一軒の露店の前で止まった。


「確かここにありましたよね、脱出ポッドの燃料」


「ん? 脱出ポッドとはまた珍しいな」


 中から顔を出したのはカウボーイハットをかぶった豚のような顔をした男だった。


「ここでは野暮な質問はなしですよ」


「わかってるよ。ほら、これをくれてやるから持ってけ」


 豚の男はスーツケースくらいの大きさの箱を目の前に置いた。


「え、代金は?」


「もう何年も脱出ポッドでここに来た者は見ちゃいねえ。このおにもつをどうするか考えてたところだ。邪魔だから持ってってくれ」


「いいんですか? 助かります。ありがとうございます」


 私は目の前に置かれた箱を受け取った。


「よかったですね。これがあればおそらく宇宙中を旅するくらいは脱出ポッドでも充分暮らしていけるでしょう」


「そんなに……」


「ええ。それでは私はこれで。旅のご安全をお祈りしておりますよ」


「ああ、ありがとうございました」


 ロボットの店員と豚の男に頭を下げ、私は脱出ポッドへ戻った。



 無事に燃料も手に入れたことだし、次の星ヘ向かうとしよう。


 (早くしないと豚の男が追いかけてくるかもしれないな……)


 私は少し急いで出発した。


 豚の男はもう何年も脱出ポッドを見ていないと言っていたが、これからたくさんの地球人が脱出ポッドでここへ押し寄せるだろう。


 豚の男はタダでこの燃料を渡したのをきっと後悔するはずだ。


「はは……」


 豚が悔しがってブーブー言う姿を想像して私はおかしくなっていた。


 豚には申し訳なかったが、この好意をありがたく受け取って私は空へと飛び立った。


 (もしもまたここに来たら必ずお礼をするから)


 そう心に誓ってから、私は次の星までの眠りについた。




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