Entangled-W.a/W.b-
千羽もろこ
0-0:旧新世界
今迄に存在しなかった技術が、ある特定のタイミングで複数世界に生まれた時、世界の形は大きく姿を変える。その変化は人々の生活であったり、生き方そのものであったり、道具の使い方であったり様々である。結果として新世界と言える程の激烈な変化により、力のない『国』の多くは崩壊する事になった。多数の『国』の崩壊は当然世界にまた大きな嵐を起こし、地図は過去に視ない程塗り替えられ、今迄に存在していた法や秩序は、意味の無い物へと成り下がって行った。
崩壊した『国』に変わって、新たに統治者の座についたのは『企業』であった。特殊な技術を持ち、元々政治家達よりも世界の流れを掴むのが上手かった彼らは、持ち前の技術力と人材を駆使し、『国』に成り代わる新たな地域をそれぞれ立ち上げた。通称『企業特区』と言われるそれは、特定の企業が治める独立した地域であり、企業を中心とした生活圏を指している。それぞれ独自の価値観と制度により、過去に存在していた『国』よりも発展・繁栄している所は少なくない。
「企業の運営が出来る奴は、国の運営も簡単に出来る」
そう言った彼ら企業の代表達の言葉に嘘は無く、『国』が存在していた旧世界よりも『企業』を中心とした新世界は、人々に進化を促し新たな領域に到達するに至っていた。『企業特区』は複数存在している。それぞれ代表される企業の元に都市や街等が作られ、多くの人々が集まりその生活圏を拡張していく。そこは今迄の概念に縛られない、自由な場所であり、能力主義であり、暴力的な世界であった。
旧世界に存在していた『国際秩序機関』と言われたモノは既に機能しておらず、圧倒的な力を持つ『企業』の前に成す術も無かった。更に企業対企業・国対国・企業対国家による武力による勢力拡大の為の衝突、通称「新世界戦争」が日常的に行われている。その戦争は更なる技術の発達や人類の進化を促し、それらは過去では考えられない領域にまで達していた。平和よりも戦争が発展や喜びを齎すのは、この新世界での常識となっている。
世界の覇権争いをしている企業はそれぞれ独自の技術を持っており、それを強みとした勢力拡大を行って来た。また基本的に生活に必要な全ての要素は、それぞれの『企業特区』内で完結しているが、一種の技術試験の場として戦争が行われている節もある。企業の代表達にとって、世界は市場であり稼ぎの場に変わりはない。『戦争』とは一番のプロモーション会場かつ経済活動である事は、この世界で生きる全ての人間達にとって有り前となっていた。
大きな力を持つ複数の企業特区を筆頭に『経済活動』が行われている、これはそんな世界の話だ。
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